橡家の伝説 (佐々木丸美コレクション)
『館シリーズ』の新展開編、『伝説シリーズ』の一冊目。「橡」は「つるばみ」と読みます。
現代科学・社会を一変させてしまう大いなる遺産は、封印されたまま三人の女性に託された。それぞれ別の時代へ向かい、子孫までこの遺産を守れ。三人の末裔が再び集まるときこそ、遺産の封印が解かれ本当の姿を現すだろう、との声に導かれて。時間のひずみに落ちて、偶然に遺言の場に居合わせた主人公たちは、現代に戻ってから三人の子孫を探し出し、遺産に隠された謎を追いはじめる。
時間移動、輪廻転生、心理学など、著者が長い間書き続けたテーマが詰め込まれた、壮大な伝奇SFミステリ。後半が駆け足気味なのがちょっと残念。長くなってもいいからじっくりと書きこんでいたなら、とんでもない傑作になっていたろうに。それを差し引いても、充分に楽しめる一冊です。
榛家の伝説 (佐々木丸美コレクション)
前に図書館で読んで好きになった作家さんです。本を持っていなかったので購入できてうれしかったです。何ってうまくいえない。でもそばに置いておきたい本が私にとって佐々木丸美さんの本です。
それまでのシリーズも読みましたが少しタッチが変わってしまったようにも思います、でも物語世界がさらに広まったようで、続きを読めればなって残念です。千波ちゃんの後を追っていた涼子もずい分成長して素敵な女の人になりました。私も勉強すれば、こんな風に成長できるのかなと思ったら嬉しくなりました。
これからもどうしていいか判らないとき、繰り返し読みたい本です。佐々木さんが耳元で何か囁いてくれるかな。
罪・万華鏡 (創元推理文庫)
館三部作を読んだ方ならお分かりでしょうが、佐々木丸美作品は耽美的というか少女漫画的描写がきつく、おじさん読者には折角の繊細な筆がなかなか届かない憾みがあります。その点、この作品では探偵役の助手である記述者の女性(妙齢の看護婦)がなかなか大人な人物として抑制的に描かれており、探偵役の少女漫画的要素を中和しています。その点、おじさん読者にも読みやすい佐々木作品入門作になっています。
雪の断章 (創元推理文庫)
これはかつて少女時代を経験してそれを表現する能力のある人しか書けないタイプの小説だと思います。男性の作家でもある程度は想像力を駆使して書けるだろうけれどここまで濃密に女性あるいは少女の心理を書くことは難しいと思います。なので、女性の読者には懐かしく、男性の読者にはとても興味深く読めると思いました。実際私も非常に興味深く読ませてもらいました。これだけの筆力の方がそれに見合う評価を得られず亡くなられたのが(知らなかった私にも責任はありますが)とても残念です。ただ、推理小説の部分はそれほどではなく、普通のフィクションのなかに推理小説的謎があるという作品なのでそこらへんはあまり期待しないほうがいいと思います。
夢館 (創元推理文庫)
『館シリーズ』三作目。
前作よりさらに神秘主義の色合いが濃くなっていて、メインテーマは「輪廻転生」。少女の成長と愛情に前世の記憶を絡めて物語は進む。少女の命が狙われるなど事件はおきますが、味付け程度でミステリ色はうすく、ファンタジー恋愛小説といった感じ。
この「夢館」は、佐々木作品の中でも重要な一冊です。『孤児シリーズ』と『館シリーズ』のつながりが、この作品でハッキリと書かれているからです(前作までもチラチラッとにおわせてはありましたが)。『孤児シリーズ』で少女たちが相続争いに巻き込まれた会社、東邦産業・北斗興産・北一商事の関係と対立の根が、本書で明かされています。ファン必読の一冊といえるでしょう。