小説 さくら前線 ~君だけの天使になる~
私かかねがねこの作者の作品については生きた愛を描いているとレビューしてきましたが、今回は死が大きなテーマである。
あまりにも狭いコミュニティで次々に起こるトラブルがあまりにも現実離れしているという意見もあるかもしれない。
しかし、それも、日常的な感情の動きも事件だと考えれば、さもあるかもしれない。
結局根底には登場人物の若さからは想像できない深い愛情がある。純粋であるが故におこるすれ違いや、進まない部分。
天使という立場で見える現実や逆にそれゆえのもどかしさがいっそう物語りに彩りを添えている。
ここには紛れもない生きた愛の証があるといえるのだろう。今回も名作です。
小説 僕の初恋をキミに捧ぐ (小学館文庫)
キャラクターが非常に活き活きとしています。
余命が限られた主人公と、主人公のためにたくさん涙するヒロイン。
お互いの「好き」という思いが強すぎて、衝突しあう二人が、いろんなことを経験して大人になっていきますが、その成長とともに、主人公のタイムリミットも近づいていきます…
ページ数が少ないからでしょうか、コミックが原作からなのか、ストーリーが急展開の連続です。
原作コミックとは違う、小説らしい『僕の初恋をキミに捧ぐ』が読みたかった。
その点で星−1です。
しかし、原作のテンポの良さやキャラクターの快活さを生かそうとすれば、このような展開も良いのかもしれません。
最後に、結末は自分の目でお確かめください。
原発と祈り 価値観再生道場
作家の橋口いくよ女史が聞き手・書き手となり、思想家・武道家の内田樹氏と精神科医の名越康文氏の対談を収録した一冊。(ただ、橋口女史も結構議論に参加するため、鼎談と言った方が適当な気がします。)
タイトルにある通り、最初は原発問題をテーマとしてスタートしますが、次第に論点は震災前後の人々の価値観の変化や、これからの日本人の在り方・心構えについてへとシフトします。
紋切り型の原発論に終始せず、ちょっと特殊な視点からの議論となったのは、元々内田氏と名越氏が、昨今の日本人の価値観をテーマに対談を行う企画だったからでしょうか。
原発問題だけを考えたい方は、他の本をどうぞ。この本は、これから自分はどうすればいいのか、日本はどうなっていくのか、不安に思っている方に、ひとつのものの見方(=価値観)を提供する本です。
結婚できない男
文章が一人称で書かれている。
桑野信介からの視点オンリーで。
だから
桑野抜きのシーンは一切無い。
でも、あの時あのシーンで桑野が何を考えていたのかが分かるので
非常に興味深い。
しかし
読んで実感するのが、
桑野信介を演じた阿部寛が桑野の心理描写を
演技でパーフェクトに表現していたという事実。
改めて阿部寛とこのドラマの凄さを思い知らされた。
アロハ萌え (講談社文庫)
この数年来の“にわかハワイ好き”にも十分に楽しい!
とにかくハワイ好きの気持ちが素敵に素直に伝わる一冊。
文章は軽快で読みやすい。だからと言って決して乱れた日本語ではない。
作者はきちんと堅い文章で書く基礎が出来ている上で、あえて軽妙な語り口で書いていると感じるくらいに読みやすい。
(もっとも、ハワイの楽しさを文語体で書く訳にはいかないものね(笑))
読んでいるうちに「祭りは準備が一番楽しい」との格言を思い出したり、
私が何故輸入雑貨店の洗剤コーナーに必ず脚を止めるのか、理由がはっきり判った(笑)。
もしハワイが好きな故に、我ながら珍妙な行動をしてしまう人は、同士を得た思いで勇気付けられる一冊。
『日本でハワイらしさを探す』のは決して現実逃避ではなく、心のエネルギーを充電するため!
梅雨入り直前のカラリと晴れた日に、パソコンからハワイのラジオを流し、
トロピカルカクテルの缶チューハイを片手に和室の畳にゴロリと寝転がり、
開け放した窓から青い空を見上げて「ハワイだな〜」って言っちゃうのも素敵じゃないですか。
あー、ここまで書いて思い出した。『アームアンドハンマー社』のカーペットデオドライザーは、ハワイのコンドの香りがすると信じているので、ドンキ(旧ダイエー)でこの前、沢山買い込みました。