DELICIOUS
中村氏のファンクのアイディアがとても気持ち良い作品です。例えば3「きづいてよ」冒頭のAORなサウンドデザインは最高にカッコイイですし(吉田氏の最後のフェイクも絶妙のツボ)、疾走するベースの上で重厚な色彩を作る5「i think you do」、更にタイトルの由来になったディスコファンクの11「It’s So Delicious」はうねるような旋律とグルーヴで、これでもかと昇りつめ攻めゆく音展開が非常に刺激的ですね。吉田氏の声もぐいぐいと高揚してゆきます。
ファンク色以外も素敵な曲が多彩。文学的な詞と心のざわめきを映す構成で不思議な映像をみせる10「琥珀の月」、転調で宇宙への引力が働く13「おやすみのうた」。中でもシンプルさがいい8「TORIDGE&LISBAH」はベースとボンゴ、ギターだけの即興楽曲。濱田尚哉らの「タカタカタカ…」と残すボンゴの余韻や、奥様の美和子さんがマグカップとシュガーボウル(砂糖入れ)を叩く「チンチン…」というかすかな音が絶妙です。他にもクレジットに「椅子」「本」とあり、耳をそばだてると本当に面白いサウンドですよ。一方そばだてるといえば名曲12「サンキュ.」での吉川忠英とポール・ダンのギターでしょう。素晴しいです。
正統なドリカムバラードは7「The Sign of Love」と何といっても6「すき」。先ず7は透明感溢れる声の広がりが、夜空の広さを作りだすよう。響きは素晴しく輝き溢れます。そして6。今作ではストリングスをささやかに重ねます。詞の表記をみて改めて凄かったのは“すき”ということばが行間に溢れてゆく様子。短い詞に感情がぶわっと溢れてくる間が見事に描かれます。また、その透明な震えがコップから溢れてゆくような想いを、歌声がしなやかに表現する点も凄い。むき出しの感情ではなく、それを内に湛えた声の表現です。日本の名曲になってゆく完璧なうたですね。
スキマミマイタイ
TVアニメーション『MEZZO』のオープニング&エンディングに使用されています。CDの方はTVで使われているのとはまた違う魅力があります。また、アイさんが書く詩や曲は魂を揺さぶられます!私のオススメです!
The Songs
雅俊さんのベストものはいっぱい出ているが、近作までしっかりと収めた1枚ものって、そういえばなかったよなぁ、と思っていたところにリリースされたのが、この『The Songs』だった。
いきなりメガ・ヒットとなったデビュー曲「ふれあい」から、この時点での最新曲「空蝉(うつせみ)」までの、充実した全17曲。「後半の曲は要らない」と思う人もいるかもしれないが、近年の楽曲の中からけっこうおいしいところが集めてあるので、聴いて損はない。小田和正作品の「小さな祈り」では、珍しくアクのない素直な歌唱が聴ける。また「想い出のクリフサイド・ホテル」や「哀しい人」などは“カラオケ映え”のするよい歌なので、このCDでしっかり聴いておくといいと思う。
ところでその「哀しい人」だが、ホントに名曲だ。心が傷ついている人、悩んでいる人、苦しんでいる人、そのすべての人にじっくりと聴いてほしい(個人的には、「今の」横田めぐみさんにぜひ聴かせてあげたい、と思っている。彼女は、『俺たちの旅』の“カースケ”は覚えているかもしれないが、『ゆうひが丘』の“総理”は知らないのだ…)。
特典DVDには「空蝉」「哀しい人」「過ぎた日にそっと花を」のプロモーション・ビデオ、「恋人も濡れる街角」「心の色」「いつか街で会ったなら」のテレビ出演時の映像を収録(約23分)。
なお、この初回盤はレアだが、DVDなしの『The Songs(通常盤)』は新品で入手可能。その他に「あなたにあげたい愛がある」「100年の勇気」「過ぎた日にそっと花を」「小さな祈り」「空蝉」以外の全曲は、これよりちょっとだけ高い、30曲入りの2枚組『SONGS ON TV』(「青春貴族」「青春試考」「燃える囁き」「瞬間(ひととき)の愛」「もう一度抱きたい」も収録)でも聴くことができる。