いろんな気持ちが本当の気持ち (ちくま文庫)
長嶋氏の小説は、微妙な心の機微を絶妙にとらえ、読者に押し付ける
ことなく伝えてくれる。だからすごく好き。
エッセイは、それとは少し違って、下らないことを少しふざけて、かつ
ちょっと共感できるように分析して見ました。っていう感じなんです。
ちょっとクスって感じだけど、心に響くところがなくて氏の小説が好き
な人には不満が残ると思う。(ブルボン小林好きにはいいかも)
でも、小説の題名の由来や、バイトしていたパン屋での店主とその母
との忘年会(と言っていいものか・・、とにかく読んで)を描いた「二十
歳の年末」では小説のファンでも十分満足できる内容を見せてくれて
ます。
☆3つが妥当かと思うけど、惚れた弱みで☆4つ。
やっぱり小説が好きなら買ってほしいし、小説読んだことないなら、クス
って笑えるから買ってほしい。
自棄っぱちオプティミスト
・・・面白いです。
キリンジの音楽を知らなくても、
読み物として充分楽しめます。
ただ、今回はスティーリー・ダンの話題が何もなく、
SDから彼らに入った人間としては、
ちょっと淋しい気分もありました。
彼らとは年代もほぼ一緒なので、
ジェネレーションギャップを感じずに楽しめます。
パラレル (文春文庫)
妻と別れてぷらぷらしてる元ゲームデザイナーの向井七郎、向井の大学以来の友人で社長の津田。二人ともいい味の駄目人間である。その度合いは町田康と張るくらい。
いとおしくなる人々は沢山描かれている。また著者は男性なのだが、女性か男性か分らない。そのフラットな語り口で90年代以降ののっぺりとして滑稽な空間からこぼれてしまいそうな破片を拾いあげ、描き出す。
結婚と離婚、加害者意識と被害者意識etcそういったテーマも自然と見つかるだろうが、長嶋有さんの小説はもっと私たちに「ひっかかる」小物が散りばめられていて、大味な小説では表現されない、戸惑いやもどかしさを私たちにもたらしてくれる。
もし興味が湧いたらポプラ社のサイト内の「ポプラビーチ」の連載『電化製品列伝』を読んでみるといいかもしれません。長嶋さんの著書に登場する電化製品について、ときに作品と絡めて、ときに時代的なものを感じさせながら綴られています。バックナンバーも読めます。長嶋さんのエッセイとして、そして「電化製品」のアーカイヴとして機能していて、いろんな意味で貴重だと思います。
「パラレル」と並行して読むと楽しさもひとしおです。
長嶋有漫画化計画
書店で目についた一冊。原作者の作品が好きで、とくに「ぼくは落ち着きがない」のファンである身としては、
どのように漫画化されているのか、期待半分、不安半分といったところでした
結果として読んで良かったです。帯文にもありましたが漫画化や映画化には作品への「愛」が必要なのでしょう
みなさん作品をなぞるだけでなく、とても個性がありました(個人的には「十時間」が好きです)
長嶋さんによる「原作紹介」もエッセイを読むようで良かったです
他の好きな作家の方も同様の企画があるといいと思いました
猛スピードで母は (文春文庫)
文庫になって早速買いました。すごい。ぐいぐい読めました。
感動させられたりはっとさせられるときって、書き手の読者への裏切りかたがどこか冷たかったり鋭く感じたりするものですが、
これは素直な描写で淡々と書かれているおかげで、おっかなびっくりさせられることなく自然なリズムで読んでいけました。
なのに、泣けてくるのです。その感情は、実際私が今まで感じたことのある気持ち(家族とのいざこざだったり、気持ちのすれ違いだったり。)
にすごく近くて、本当なのです。だから作者は女の人だと思っていたら二度びっくり。なんでこんなに女の人の気持ちが分かるのでしょう。
1970年代前半うまれの読者にはなつかしいいろいろなグッツが出てくるあたりも、リラックスさせる一因かも。
芥川賞を受賞した表題作も良いですが、私は「サイドカーに犬」が好きです。
読み進むのがもったいなくなるくらい、私にとっては面白い本でした。長嶋さんのほかの作品も読もうと思います。