バイバイ、ブラックバード
どうなってしまうか分からないバスや5股などあまり爽やかでない題材ですが、何故かサラリと楽しめるのはさすが伊坂幸太郎さんという感じです。終わり方も良いですね。 ところで繭美は完全にマツコデラックスさんで再生されました。
白石加代子の「百物語」[宵の1] [DVD]
舞台女優をされている白石加代子さんの、怪談「百物語」を朗読したDVDです。
どこかの舞台を録画したものとなっており観客の方の声も若干入っています。
この方の魅力、それは「情感たっぷりに読み上げるスキルの高さ」でしょう。
人を物語に引き込むのが非常にうまく、本気で怖い箇所もちらほら。
各登場人物の心理描写や演じ分けがきれいで自然と情景が頭に浮かびます。
語り手を目指す方には参考としてぜひ見ていただきたい、勿論私のような一般人でも
楽しめ感心できます。「役者とはこういうものだ」と実感できる、非常に価値が高い作品です。
邂逅の森 (文春文庫)
邂逅の森…
読み進めていくうちに考えさせられた。
現代の人間は、そして自分は、
本当に生き物としての本来の生を生きているのだろうか…?
厳しい大自然と生身のまま対峙し、
共存して生きたマタギのひとり、松橋富治…
ひとたび山に分け入れば、
紛れもなくそこには命のやり取りがあり、
知恵の限りを尽くして獲物と勝負する。
獲物を仕留めた時には思いっきり息を吸い込み、
「勝負!勝負!」と腹の底から声を発っし、
木霊する雄叫びにより仲間の漁師たちに宣言する。
それは最も高揚感の滾る瞬間であり、
同時に自分が手にかけた獣の死を見つめる時でもある。
獲物となる獣たちへの敬意と、
人智を超えた自然の営みに神を感じた時代…
季節が巡り、その変化から、
そして自らの内に宿る生き物としての衝動により、
今の瞬間をどう生きるべきかを感じ取っていた時代…
多分ボクには同じ生き方は出来ない…
でも、読み進めるうちに、
登場するマタギたちの生き方に想いをはせ、
何と生き生きとしているんだろう!!
心からそう感じ、意外なほど強く羨望を覚えた。
人間の作った人間の社会という身勝手なシステムに
余りにもどっぷりと浸かり、
生かされていることへの感謝や敬意を忘れがちなボクにとって
生きるって、なんだろう…?
人間として、生き物としての本来ってなんなのだろう…?
「邂逅の森」は、そんなことを考えさせてくれる、
強烈に迫ってくる一冊でした。
斬る [DVD]
人間がまっ二つに割れるなんてちょっと荒唐無稽なところはあるも、暗い出生からくるそこはかと虚無的な主人公はまさに雷蔵にぴったりと言っていいだろう。まだ狂四郎がシリーズになっていなかった当時の作品ということも注目していいだろう。殺陣の醍醐味も味わえる中篇の佳作である。
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)
複雑な構造の藩主・綱宗の逼塞・・・、この首謀者のひとりが時の大老
「下馬将軍・酒井忠清」です。幕藩体制を強固にするため、
雄藩は些細な事をあげつらわれ、改易・除封の憂き目に遭っていました。
伊達の連枝、兵部宗勝との縁組も巧妙に仕組んだ罠と云えるでしょう。
混迷する仙台・伊達藩に在って超然と泰然と原田甲斐は呼吸を計るように
事件に関与してゆきます。原田甲斐は船岡城の館主で「着座」という
(いわば親藩ですね)家柄に生まれます。何やら赤穂事件の大石良雄のようです。
普段の沈着ぶりとは対照的に描かれるのが【くびじろ】とのくだりです。
この猛々しさが甲斐のバックボーンなのでしょう。本性といってもいい。
事に臨んで、右往左往するのが人の常ですが、この原田甲斐、
非常事態になればなるほど、冷静でいられるようです。
読み進めていくうちに、この人の非凡さや人としての行間のようなものが
際立って来て敵・味方を問わず、影響を与えてゆきます。
余韻のようなものでしょう。それにしても山本周五郎氏の筆力、見事です。