江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
私、いわゆる少年探偵団シリーズって読んだことがないのです・・・
普通の清き正しい??人たちは、まず、二十面相と明知探偵、小林少年の知恵比べにドキドキする小学生時代を経て、「二銭銅貨」「屋根裏の散歩者」「赤い部屋」「芋虫」の世界に入っていくのでしょうね。
個人的には、乱歩の神髄は短編にありと思っております。そういう意味ではこの本はなんとも贅沢のセレクション。すべてが、名作、傑作といってもいい。『二癈人』、『D坂の殺人事件』が若干不満が残りますが、とは言え水準以上の作品であることに間違いない。これが、540円で入手できる。お安いですね。
我々は、目で現象を見ていると思っていますが、「目」はある意味レンズにすぎず「脳」で見ているといえなくもない。原理的にいうと、「目」を介さず「脳」の直接信号を送っても「見た」と感じることはできるはずなんですね(素人かんがえですけど)。乱歩って『赤い部屋』「屋根裏の散歩者』にしても視覚イメージが華やかって印象が一見あるけど、個人的には乱歩の魅力ってむしろ、「目」を介さないで直接「脳」に攻撃を受けてくる・・・イマジネーションのすごさではないかと。
『芋虫』の軍人さんのおぞましさも『屋根裏の散歩者』の題名そのままんまの屋根裏を徘徊する主人公のイメージも視覚的でありながら、受け取った読者のイマジネーションが作り出しているもの。『鏡地獄』のあれなんて、実際もし映像化されたら、意外とたいしたことないかもしれない・・・でも読書として体験するとまあ、恐ろしいこと、恐ろしいこと。まさに「脳」に直接攻撃なんです。
横溝作品に比べて、乱歩作品の映像化はイタダケナイものが多い。おそらく、横溝作品の視覚的イメージって極めて具体的で映像しやいけど、乱歩のそれは、読書の脳の中にあるからなのでは・・・などと考えてしまいます。
・・・と言う訳で「江戸川乱歩」を体験するなら読書で・・・しないといけないのだ!!と思う次第。
うーん、それにしても540円は安いなぁ。
江戸川乱歩シリーズ DVD-BOX 3
今までバラ売りされていたものですが、BOX化されるにあたり低価格&資料付として再リリースされます。
ラスト8作品セットという事で、このBOX3の見所は「禁断の実の美女」「妖しい傷あとの美女」あたりでしょうか。
ちょっと風変わりな家具職人を演じる「レオナルド熊」さんと、富豪の婦人を愛するあまり、犯罪に手を貸してしまう男を演じる「中尾彬」さんの名演技!
残念な事に、「黒真珠の美女」撮影後TV放映を待たずに天地茂さんが急死された為、シリーズが一旦終了となってしまいました。
ファンならずとも、一見以上の価値がある作品です。
江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎ミュージックファイル
本シリーズが放送されていた当時は、私は中学生だった。
12チャンネル初期の垢抜けない妖しげな番組は、すぐに乱歩ファンの男子中学生の心を鷲掴みにしたものだった。
本作のDVD化を望む声は多い。
私も、発売されたら迷わず購入する。
そんな魅力あるドラマの、とりあえず音楽だけでもこうして発売されたことは、嬉しいかぎりである。
できれば、これをきっかけにして、本作のDVD化が進行してくれたら言うことはない。
しかし、とにかく音楽だけでも、本作の妖しいムードは伝わるだろう。
ああ、これに映像がつけば・・・
youtubeで見られるOPとEDだけじゃ物足りない。
滝俊介の明智は、私にとっては天知、夏木等、その他の明智よりも、最も明智らしかった。
スタイリッシュで格好良かった。
あこがれたし。
しゃべり方なんか真似したものだった。
ぜひ、ぜひ、本編のDVD化を!!!
あの頃の12チャンネルの熱気をもう一度!!
マスカレード・ホテル
表紙を見て、ホテルで催される仮面舞踏会に潜り込んだ犯人と捜査官の頭脳戦!的なストーリーかなと勝手に思い込んでいましたが、見事に違いました。
推理ものというより、クセのあるお客様に対してホテル側がどう対応するか、そこが面白いです。
てか正直、途中で犯人わかる人いないんじゃないでしょうか。
しかも事件という事件が起こるのは本当に最後の部分で、ちょっとバタバタッとした印象。
でもその事件解決には、今まで対応してきた客達がカギとなっていて…というように、散りばめられた伏線がうまく収拾されています。
それに文章がうまいので、スラスラと読めました。
犯人やトリックには少し疑問はありますが、尚美さんの接客術や、新田さんの成長などストーリーは魅力的ですので☆5で!
あの頃映画 松竹DVDコレクション 「江戸川乱歩の陰獣」
あまり独自の映像スタイルにこだわる監督の映画には夢中になれない、という私自身の好き嫌いもあるんですが、加藤泰さんのスタイルである極端なローアングルの固定画面と長回しには、とくに必然性があるとも思えません。却ってあれをうっとうしく感じることが、ままある。
この映画などは、モダニズム化される前のネチネチしていた頃の乱歩を、なにがなんでもあの潔癖症気味のスタイルで撮り切ろうという強固な意志すら(題名にわざわざ「江戸川乱歩の」と付けるところにも)感じて、むしろ清々しいほどではありましたが、どうにも中身とスタイルのミスマッチ。それに、主演があしたのジョーと平次のカミさんでは健全すぎて…。大友柳太朗はさすがの貫録でいい味出してるけど、なんだか滝沢修にそっくり。どうも、1970年代以降の加藤泰さんの映画は、配役に首をかしげたくなるようなのが多い。
加藤泰さんの松竹作品のうち、DVD化されてるのは、これ以外では「人生劇場」と「花と龍」ですが、どちらも冗長なだけで出来はイマイチ。
松竹だけでなく東映・新東宝作品を通しても別次元的に出来がいい松竹作品「男の顔は履歴書」と「みな殺しの霊歌」は、DVDになってないんですよ。(時代劇・任侠映画をメインに監督されてきたのに、これらは2つとも現代劇。どうやら、現代劇に時代劇・任侠映画的な主人公を登場させて、頑固な生き方を通させると、作品にもいい味が出るようです。要するに加藤泰さんは、ご自分同様、頑固な人がお好きなんですね。)
再発もいいけど、別の作品も出してもらいたいなあ。
「陰獣」だけだったら★三つですが、上記2作品のDVD化への願いの分を足して、★五つ。