風紋〈上〉 (双葉文庫)
ある殺人事件をめぐり、その被害者の家族などの身の上に、
ふりかかってくる影響を描いた作品。
死ぬことによって、それまで、隠されてきた感情が表に出てきたり、
死によって断ち切られた想いが、切ないです。
と、書くと、息苦しいお話だと思われそうですが、
全体を通じ、作者の優しい気持ちのようなものが、感じられ、
題材の割には、読み易い作品だと思います。
いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)
嫌味の無い道徳の教科書…といったような読後感。
小さな町に普通に暮らしているひとたちを背景に
前科を持つ女性二人が静かに普通に生活している
…様々な不安や哀しみを胸に秘め、自分を戒めながら。
読みやすい文章で、さりげなく深く優しい内容だから、イッキに読めます。
最終話で、芭子(ハコ)が綾香の本当の姿を垣間見てからの成長するさまは
ホンの数ページなのに嬉しくなりました。
しゃぼん玉 (新潮文庫)
この小説の帯には・・・
「手元が狂ったのだろうか。今まで通り、軽く斬りつける程度で良いと思っていたのに。
何しろ、こちらの目的は相手のバッグだ。金だ。だから相手が怯み、ついでにいえば、
ちょっとした悲鳴でも上げてくれれば、それで十分のつもりだった。
背中越しに聞く女の悲鳴は良いものだ。ほんのわずかでも、キャッとか、イヤッとか、
そういう声を聞いただけで、頭の中がすうっとする。(本文より)」
オイオイ。かなり危険な主人公ではないかっっっ。
現実の世界にも、こういった主人公がいるのではないか、と思わせる世の中。
やはり更正の道はないのだろうか?
しかしそんな主人公を優しく包み込む出来事があって
涙なくしては読めない心理サスペンス感動の傑作!!
でた〜!!
ワタシの苦手な「涙なくしては読めない」という、うたい文句。
これに何度、だまされたことか。
しかし、この本は本当に心洗われる気持ちになりました。
先の展開が気になり2日間で読み終えてしまいました。
凍える牙 (新潮文庫)
この本を読んで、まず第一に、犬を飼いたくなりました。人間より、自分をわかってくれるペットをきっと誰もが飼いたくなるはずです。そして、私はバイクに乗ってみたくなりました。しかも大型!この本の主人公のようにバイクにまたがり、ストレス発散するかのように滑走と走ってみたくなりました。主人公がバイクに乗っている描写や、気持ちをきれいに書いている作品で、読んでいてとてもひきつけられます。読んでみる価値あり!
風の墓碑銘(エピタフ)〈上〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫)
音道貴子シリーズを順に読んできました。
鎖に星5つをつけました。シチュエーションのすごさにしびれました。
そして、この作品に星6つをあげたいです。捜査のストーリーにしびれました。
鎖が力ずくの迫力だったのに対して、こちらは、計算しつくされた緻密さを感じました。
最後、色々、丸く収まって良かったです、と言いたい所ですが、被害者たちにとっては、取り返しのつかない結果になってしまっているわけで…その重さを感じさせました。音道さんにも滝沢さんにもどうにもならない、増してや、私たち読者には手も足も出せない悲しさを感じました。
音道さんと滝沢さん、2人とも良い人なのに、なぜかうまくいかない関係をもどかしく感じさせながら、最後、事件の解決と共に2人の誤解も解けたように感じさせてくれたことも良かったです。
枝葉の部分の挿話も良かったです。同僚の泥沼のような恋愛。この作品に重みを加えてくれたと感じました。
乃南さんの他の作品も読むのが楽しみです。