朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)
1999年の東海村臨海事故被曝患者と医療チームの壮絶・凄絶な83日間の記録。
被爆治療の限界。延命治療はどこまで必要なのか。被爆した大内さんが意識がある内に放った言葉「おれはモルモットじゃない」。被爆直後の様子から、意識を失った後、加速度的に悪化する皮膚の状態・内蔵の状態。
医療チームスタッフのインタビューから、延命治療の是非という重すぎる問題の前に懊悩する家族・スタッフ。致死量を大きく超える放射線を浴び、「医学的」に生存の見込みはほとんどない患者なのに延命治療をする意味は?変わり果てた大内さんの姿を前にして心が揺らぐ。
放射線という現代医学の知識を遥かに超えた悪魔を前にあがき苦しむ様には一抹の虚しさを感じつつ、家族とスタッフの気持ちに通底する、大内さんの奇跡の回復にかけた愛に息が詰まる思いで読了しました。本書のもとになったNHKスペシャルを観ていないので是非再放送を望みます。
鉄道噂の真相―現役鉄道員が明かす鉄道のタブー
不謹慎ですが、セールスコピーの、「電車を停めると、1億円請求される?」や、「人身事故は、バイトが処理する?」という文句に惹かれました。半ば都市伝説化しており、その真相は常々興味をもっていたので条件反射的に手に取ってみました。立ち読みで済ませるつもりでしたが、著者の大井さんが現場で積まれた盛りだくさんの貴重な体験談の面白いことこの上なく、時間を忘れて一気に読み進めてしまいました。もちろん、きちんと購入した後に、です。興味の尽きない話題が満載で、知りたくても知ることの難しい鉄道のウラの実情を垣間見た気がします。
最後に大事なことが書かれてありました。兵庫・尼崎で起こったJR西日本の脱線事故はまだ記憶に新しいところですが、一鉄道員としての事故原因についての考察と鉄道の安全というものに対する哲学が丁寧に述べられてあり、非常に深い感銘を受けました。