審理炎上
全てを飲み込みそうな渦。
思わずジャケ買いならぬカバー買い の勢いで手にとってみた作品であった。
「現役弁護士による超ド級のリーガル・サスペンス!」とは!?
「四月は残酷きわまる月」ではじまるこのフレーズに 反応を示す読者も多
いのではないか。 法律家の硬めの文章かと思いきや、文学の香りを匂わせる。
先が楽しみだ。
ゆるやかに流れるバイロンの詩風に乗り、 その中に浮かび上がる人物。
新人弁護士水戸裕介を取り巻く、クライアント成川夫妻、ボスの狩田弁護士
をはじめ登場人物は極めて人間的である。
ミステリー喰わず嫌いの方でも誰かの立ち位置で入りやすいのでは。
現役弁護士である作者故の詳細な描写。
準備書面・・と淡々と描かれる中での、水戸・狩田両弁護士の掛合いや
法律事務職員の他愛無い会話に、一見近寄りがたい感じもする法律事務所に
繰り広げられる日常の垣間見の感もあり それもまた一興と頷きながら、
軽快なテンポで一気に終盤に!
損保を相手にまさかの展開!
気持いいくらい清々しい気分で本を閉じた。
こうなったら乗りかかった船だ。
水戸裕介の過去が知りたくなって、処女作「死刑基準」も読むことにした。