Battleship Girl -鋼鉄少女- 2巻 (ガムコミックスプラス)
台湾人マンガ家による艦船擬人化マンガの第二巻。
大東亜戦争の史実を踏まえて進むストーリー。
本巻は空母『エンタープライズ』による本土空襲から、珊瑚海海戦における大勝利と日本(作中では大東日)に生じた慢心までを描く。
(番外編的にマカオでのバカンスも…この番外は諜報活動のメタになってる)
表紙は『雪風』。
よく考えてみると、幸運艦なのに一巻の表紙を飾れなかったのは、最大級の不幸なのではないか?
前巻では巻頭カラーで書き下ろしの漫画パートがあったが、本巻は折り込みカラーで桜をバックにした一枚絵と、SDキャラクターをあしらったストーリーと陣営の紹介がある。
本編ではついに『大和』がフル装備に。
艤鎧と言うのは”必要に応じて必要な部分が呼び出される”と言う描写がなされた。
もしかしたら装着位置もある程度の融通がきくのかもしれない。
ちなみに『大和』の副砲描写は『陽炎少女 丹陽』を含めても初めてである。
未完成だが姉妹艦『武蔵』も登場。
武蔵なだけに二刀流で、シブヤン海での展開を頭に入れて武蔵坊弁慶もイメージしているのか、妹のイメージは非常に荒々しい。
現実の『大和』と『武蔵』は、乗組員ですら間違ったと言われるくらい似ているが、このコミックでは両艦の艤鎧形状は全く違う。
どの部分がどこに対応しているのか考えるのも楽しみ方の一つだろう。
史実と違う部分としては、ドイツより巡洋戦艦『シャルンホルスト』が回航されてくる。
この『シャルンホルスト』のデザインがまた傑作であって、実艦で特徴的な『記号』はだいたい入ってる。
ツインテールの髪(とバックパック)にあしらわれた射撃指揮装置の処理は「上手い!」の一言(この指揮装置は実艦ではしょっちゅう壊れていたが…)。
珊瑚海海戦で『レキシントン』を撃沈し『ヨークタウン』を大破させ、勝利に酔う「お犬様」たち(一般国民や事務官僚・軍人たちのメタ)と、それに疑問を抱く戦闘艦艇たち(現場の軍人)を対比させてこの巻は幕を閉じる。
最終ページ。
『雪風』の「シャルンに満開の桜を見せられなくて残念だよ!」に、日本の将来が暗示されているようで物悲しい。
1/700 ウォーターラインシリーズ No.344 日本海軍 軽巡洋艦 熊野 31344
縁あって駆逐艦や戦艦に乗っていたおじいちゃんと知り合って、40年ぶりにウォーターラインシリーズに取り組み始めています。熊野は、15.5センチ三連装主砲を5基装備した最上型巡洋艦の4番艦です。艦橋も小さく、全体のシルエットがかっこいいと思って、満を持してタミヤ製の新金型キットを作ってみました。
結果、作りやすくて、楽しくてしょうがない造船とまりました。さすが、タミヤ製品です。舷窓を開けたり、マストの一部を真鍮線に作り変えたりした程度で、エッチングパーツなどはまったく使わず、ほとんど素組みで作りましたが、私は大満足です。作る上で注意が必要と思われることは次のようなものです。(レベルの高い造船技術者は、すっ飛ばして読んで下さいね。あくまで、私のような素人モデラー用です。)
(1)左右に分割された側面(部品番号C1,C2)を貼り合わせる角度が決まりにくいです。船底を先に貼りますが、そのとき甲板も挟んだりして、角度を固定しましょう(2)喫水板(船底)の先端が細くてとても破損しやすいです。貼り付けた後、引っかけて壊れないようにマスキングテープを貼って、守りましょう(3)甲板(部品番号K27)は貼るときに前後に隙間が出来やすいです。輪ゴムや小型の万力などでしっかりと押さえて貼り付けましょう(4)マスト類は、すばらしく繊細に出来ているので、そのままでもいいかもしれません。真鍮線に置き換えるのであれば、一部分だけにした方が無難かもしれません(5)艦載機、とくに九五水上偵察機の左右のフロートがあまりにも小さくて、翼に正しく付けるのが難しいです。ピンセットから飛んでいってしまいがちなので、箱の中で工作しましょう。機体にデカールをうまく貼るのも私には難しかったです。
思いつくままに書いてみましたが、実は制作上の大きな障害はありません。ある程度の模型少年なら、まず何の問題もなく、素組みで素晴らしいシルエットの熊野ができると思います。技量のある方は、きっと細かく作り込むのでしょうね。インターネットや雑誌上の凄い作例には、いつも感心します。でも、それぞれの技術で楽しむことが大切だと自分では出来上がりに納得しています。
ちなみに、この模型を作るために、「巡洋艦入門」(光人社NF文庫)、「日本海軍艦艇写真集 重巡 最上、三隈、鈴谷、熊野、利根、筑摩」(光人社)、「図解 日本の重巡」(光人社)なども買って読んだり、眺めたり。そんな時間も楽しいですね。
ともかく、艦船模型制作の楽しさを少しでも感じてもらいたくて素人の私はレビューを書いています。模型作りから遠ざかっている方、一度、新金型のウォーターライン製品を作ってみてくださいね。私のように、やみつきになるかも!
軍艦「矢矧」海戦記―建築家・池田武邦の太平洋戦争
…硝煙のにおいの中に、死傷者から流れる生臭い血のにおいが混じり、鼻をつく。内臓物が排水口を塞ぎ、甲板によどむ。艦の動揺に合わせ、血潮が泡をたてて右舷へ左舷へと流れては戻る。(本書318頁)
「矢矧」最後の戦い・沖縄海上特攻戦において、直撃弾を受けた矢矧船上の酸鼻を極めた光景である。それでもなお、矢矧は沈まない。戦闘を止めない。「生死も超越し、硝煙と血のにおいの中で、ただ、ひたすら戦っていた。」戦っていないのは、死者だけであった。
太平洋戦争について、思うところは多い。個人的には「始めてはならなかった戦争」であったと思う。だが、この戦争の中で、多くの立派な男たちが立派に戦って死んだ。彼らの死は決して無駄ではなかった。彼らが雄々しく戦って散ったことにより、それゆえに今日の日本の繁栄がある。この本は、まさにその死者たちへの鎮魂歌である。
伊藤整一艦隊司令官が、妻に残した遺書が紹介されている。
「親愛なるお前様に後事を託して何事の憂いなきは此の上もなき仕合せと衷心より感謝致候。いとしき最愛のちとせ様」
立派な男たちが、立派に戦って死んだ。そのことを生き証人・池田武邦氏からの聞き書きをもとにまとめた本書は、まことに貴重な記録である。