異人類白書
柴門博士と助手の吉元が社会の一歩外で人知れず暮らす「穴居人」「盲点人」といった異人類達を追い求める。
平和な戯画的世界の中で、異人類を世界の片隅においやっている人間の傍若無人ぶりがユーモラスに描かれる。
電話の混線にまぎれてあやしげな謀略をめぐらす「混線人」が面白い。
助手が絶えず口を動かして食べているもの(実在の店名が頻出)がとても旨そう。
蒐集家(コレクター)―異形コレクション (光文社文庫)
大変密度の濃い20人の著者の書き下ろし20作品が収められているが、このシリーズの常でもある。それぞれの作品には著者の個性が遺憾なく発揮され、ほとんどの作品で予想もしなかった結末が用意されている。我々読者は読む楽しみに加えて、衝撃的な結末を含めた読後の余韻にひたるのも楽しみの一つだ。そういう観点から思うに、もう少し収録作品数を厳選して少なくする方が手軽で読みやすいかも知れない。
コレクターというタイトルは読者を裏切らない。このタイトルから、ちょっとした切手などのコレクションなどを想像する方はほぼ皆無だろう。それよりもコレクターという言葉に狂気じみた響きを感じる。内容はやはり、、、である。膨大な蔵書のコレクションであったり、色々な動物の目玉のコレクションであったりと、時には極度のお道楽、時には猟奇じみたりしている。ホラー・ミステリーファンにはたまらない内容だ。中島らも氏の遺作も収録されているが、これは大傑作だ。
収録作品数はやや多めだが、ハズレは一つも無い。
どの作品も一気に読めてしまう面白さで、結末が心に強く突き刺さる。
ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)
とても面白かったです。
特に大きな盛り上がりもないのですが、なぜか凄く面白いです。
分類すればファンタジーになるのでしょうか。
この不思議なタイトルからは、内容を想像し難いですが、
読んで楽しく、読後爽やかな不思議な世界を楽しめます。
主人公はとても不安な状況に陥っているはずなのに、登場する
キャラクターが皆どこか牧歌的で、いつの間にか安心してこの
世界にはまっていきます。基本的に笑いながら読める本ですが、
ジーンとくる場面もあったり、また文体の軽いのも手伝って、
一気読みが可能です。そして、誰もが、ダブ(エ)ストンを
彷徨ってみたいと思うことでしょう。
類似する作品はちょっと思いつきません。
この不思議な魅力にあふれた傑作を、一人でも多くの方が
読まれることを願います。
実験小説 ぬ (光文社文庫)
表紙のインパクトどおりに、なんとも活字の魔術師、
文体を弄ぶクラウンとでも評したくなるような、
文字通りの『実験小説』ですね。
…写植さんがさぞかし難色を示したのでは、と推測(w;
ただ…どうもほとんどの収録作のオチとしてヌルつくかのような死の描写が付いてまわるのが
どうしても気になります。
「意外なオチ」を目指した時、案外「死」というのは扱いやすいものなのですよ。
…そのぶん、よほどの手腕がなければ読み手を不快にさせてしまいがちですが。
惜しむらくはこの方の場合も、ショートショートの神様・星新一氏のような、
死すらもさらりと読ませてしまう「透明な文章」の域までは達していない事ですね…。
しかし唯一、「カヴス・カヴス」には感服。
類を見ない、見事な文章構築を見せる奇怪にして秀逸な作品かと。
他の収録作だけなら奇異ではあるものの★3というところですが、
この一作に敬意を表して★4で。