利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵
「利己主義」
よく聞く言葉です。
よく目にする状況と言ってもいいかもしれません
その対義語を挙げてみると、「利他主義」というのかな…
あまり聞かない言葉なうえ、あまり目にしない性質です。
それは結局、少数派だということなのでしょう。
本書はその意味合いからくる「利他」を、モットーとする『利他のすすめ』です。
著者は日本理化学工業 会長。
この会社は、チョークを製造する工場を運営しています。
特筆すべきは、その工程内の「改善」の歩みです。
現在、製造ラインをほぼ100%知的障害者のみで稼動させるまでに至りました。
そこまでの道程、エピソードがいくつか紹介されていますが、
どれも、ハッと気付かされる示唆に満ちています。
実際、著者たちがその仕事を通じて、受け取ったものの方が多いと自認している程です。
<仕事がうまくいかないときや、障害者が言うことを聞いてくれないときには、
相手のせいにするのではなく、自分の態度や指示の仕方を見直すようになります。
そして相手の立場に立って、相手に伝わるような対応をする力をつけていきます。
「人のせいにしない」からこそ、自分を磨くようになるのです。>
知的障害者たちの反応はストレートです。
そして彼らに不信感をもたれてしまうと、それは「無反応」という「拒否」の意思表示で返ってきます…
「主と従の力関係で従わせようとしても、それが成功することはない」
「嘘やごまかしはまったく通用しない」
この会社全体に培われた認識です。
知的障害者との関係に悩む社員に、著者はこう語りかけます。
「君は本気で仕事に取り組んでいますか?
本気で彼らのためを思っていますか?
君が本気でなければ、彼らは応えてくれないんだよ」
それは、社員が我が身を振り返るきっかけに他なりません。
そして、知的障害者の正直さが、彼らを成長に導いてくれるといいます。
「利他主義」を愚直に実践してきたからこそ、現在の発展があると著者は確信しています。
その心境に至るまでの経験、会社の成長は、素敵なエピソードに溢れていました。
現在、障害者雇用割合74%
著者は、今後も彼らに、「他人から必要とされる喜び」を得られる職場、社会を提供したいと望んでいます。
「あともう少し、お役に立てれば、僕の人生はいいかな」
そんな心境になりつつある著者。
その器の大きさも、障害者と真剣に対峙してきたからこそ、磨かれたものかと思います。
「自分が自分が」という利己主義が多い中だからこそ、
利他主義という実践例を見ることで、心を豊かにしてもらえました。
日本でいちばん大切にしたい会社
2005年をピークに日本の人口は減少に転じた。
すでに地方では顕著になっていることだが、これから日本のマーケットには「縮小圧力」が猛烈にかかってくる。消費する人口が減るのだから、業界全体の売り上げは減るのが当然である。そのような時代に適した経営戦略が求められているのだが、本書はそのような時代における1つの「成功モデル」を提示していると思う。
かつて人口が増え、マーケットがぐんぐん拡大していた頃は「成長すること」が正解だった。
新しい客がどんどん来るのだから、少々粗雑な扱いをしてもよかったし、それよりも「数」を増やすことで利益が上がった。極端な話、客に「もうこんな会社とは付き合いたくない!」と思われるような「焼き畑農業」的商法であっても、マーケットが拡大している間は通用した。
しかし、今やマーケットは縮小するばかりである。いったん客を失うと補充することは容易ではない。さらに、縮小するマーケットでは情報が伝わりやすく、「口コミ」が威力を発揮する。このようなマーケットでは「今ある客を大事にすること」を中心とする、「マーケットの深堀り」戦略が有効である。お客様の数は減るに決まっているのだから、一人ひとりのお客様を大事にして客単価を上げていくしかないのだ。
本書で紹介してある企業の経営戦略に共通するのは、「成長への誘惑」を断固断ち切っていることである。極めて意志的に、頑固なまでに「小さいまま」でいる。「大きくなる」ことで自らの強みが失われることをよく知っているからであろうが、おそらくそれは正しい。小さな企業だからこそ、高付加価値なサービスを提供できるのだ。21世紀型の経営モデルとして非常に興味深い。
銀座木村屋あんパン物語 (平凡社新書)
銀座木村屋の「あんパン」と言えば、ある意味銀座のシンボルである。本書は木村屋を初めとする「あんパン」の歴史を綴った熱き物語。
創業者からしてまず驚く。木村安兵衛という武士だったのだ。彼とその息子達は"武士の商法"という下手の代名詞を覆し、山岡鉄舟と知己を得て、その伝で「あんパン」を明治天皇に献上。更に徳川慶喜の好物の一つにもなる。また、同じく鉄舟の力を借り、清水次郎長のバックアップを得て静岡と焼津に支店を出す。芝居を書こうと思っても、こんな人間関係は思い付かない。この他、鹿鳴館時代のチンドン屋を用いた宣伝、ニセ木村屋の出現等、話題は尽きない。最後に木村屋は全国展開をする。
「あんパン」にこのような歴史があったのかと驚く事請け合いの快作。
工場萌えF
前回の工場萌えにつづく本である、工場好きにはたまらない内容!実写フルカラーと文章による解説は石井 哲様, 大山 顕様ならではです、この作者ぬきに工業地帯を語ることは難しい、あまりにも有名すぎる作品です出版社は小 中学校の教科書で定評のある東京書籍その文章力は文句の付け所がありません工場好きに送る一冊です。
働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~
障害者雇用だけにとどまらず、
本当にいろいろな事を考えさせてくれる、とても良い本です。
働くとは何か、
幸せとは何か、
障害者を戦略化する仕組み、
最低賃金について、
職場でのコミュニケーションの取り方、
経営者としての判断の取り方、
さらには子育てなどなど。
様々な事が語られ、その1つ1つに大いに考えさせられます。
多くのビジネス書のエッセンスが詰まった1冊です。
しかも、文章が非常にわかりやすい。
暖かく、おごらず、溺れず、情に流されず、
著者の経営姿勢、人間性がにじみでています。
ぜひより多くの経営者の方に読んで頂き、
今一度、雇用の在り方を考えて頂きたい1冊です。
そして雇用者の方も、
職場でのコミュニケーションの取り方や、人が人を支えあう事でお互いが伸びていく事、
などを感じて頂きたいなと思いました。