藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12
※大全集12巻のレビューです。てんとう虫コミックス12巻のものと混ざっているのでご注意ください。
ドラえもんがのび太に対して厳しくお説教するシーンの多い巻です。それに対しのび太も、屁理屈をこねたり同情を引く言動を取ってなんとか便利な道具を出して貰おうと、そのへんもギャグになっています。
この12巻では「小学一年生」掲載分は佳作ぞろいですが、それ以降はネタかぶりが目立ったり、まとまりの悪いエピソードも多く、星評価を少し下げようかとも思いました。しかしオチにギュッと面白さを凝縮したエピソードもまた多く、そんな短所を補って余りあります。「四次元たてましブロック」「分身ハンマー」「十戒石版」このへんはオチのコマだけで面白すぎです。
もうひとつ紹介しておきたいのが「ぐ〜たらお正月セット」です。25年以上前の作品ですが、現代の人こそ、この作品を読んでもらいたいと思うのです。
セットの中身は「人払い御幣」「初日の出ジオラマ」「スーパーインスタントお雑煮」「お節ボックス」「自動振込みお年玉通帳」「お座敷凧」「一人遊びマシーン」「全チャンネル壁掛けテレビ」……。藤子先生は予言者でも社会学者でもありませんが、私は読んでいて身につまされるところがありました。
なお、レビュータイトルののび太の妹については、読んでみてくださいとしか言えません。実は私はこの巻を読むまでその存在を知りませんでした。可愛かったです。
ジェネラル・ダイナミックスF/FB-111 (世界の傑作機 NO. 62)
VG翼,A/B付きターボファンエンジン,地形追随レーダーなど多くの新技術を史上最初に実用化した歴史的な名機・・・になるはずが,要求が過大すぎたためにトラブルやコスト上昇を招いた悲劇の機体です.
内容自体は傑作機シリーズ共通の仕様で,各タイプの差異や機構の説明が簡潔にまとめられています.採用されなかった海軍機仕様のB型ではAIM-54 フェニックスミサイルを装備した写真も収められています.
電子戦型のEF-111の湾岸戦争での活躍や,同じ電子戦機の海軍機EA-6Bとの戦術の違いは興味深い内容です.
Deep River
ファンではない自分だが、この時期の詞の深さが魅力的に映り、そして今作の
白黒の写真と「DEEPRIVER」という主題を見て、買おうと思った。というのは
2点。白黒写真とは被写体の精神を写しだすものだし、そして「DEEPRIVER」
という題は元々黒人霊歌に有名な望郷の曲があり、その二つから彼女の精神の
深い河を見ることが出きるのではと思ったのだ。(※深い河とはヨルダン川
で、その果てのカナンの地{約束の地}を夢見、天国を夢見た奴隷たちの魂を
歌う曲)
聴けばどの詞も、女の文学的色彩感覚が溢れていて驚いた。幸せに向い顔を上
げて歩くヒロインが描かれても、何処かことばの世界観に「あはれ」儚さや切
なさも感じさせられる。一方でこえの繊細さが、そのことばたちのしなやかさ
に相応しい表現となり、それらにいのちを与えていた。
こうして気付かされたのは、彼女の楽曲が優れているのは、類稀な旋律やリズ
ムのライティングセンスのみならず(ノリだけなら他に吐いて捨てるほどあ
る)、ある種の「暗さ」(しかも極めて女性的な)を奥底に湛えているからで
はないか。普段気丈に振舞う子ほど、内側に繊細な感覚と闇を持ち合わせる。
そこから発する彼女の歌声は前向きな歌でも、きゃぴきゃぴせず落ち着き、詞
は現象を俯瞰した冷静さを秘めている。そうかと思えば葛藤の純粋さも光る。
そういう内省的な詞中のヒロインは、小説の一場面を鋭く切りとった描写力に
生きており、リスナーは目を閉じるとそのヒロインと共に感じ、疾走し、次の角を
彼女と共に曲がりにゆくのだ。
今作は、宇多田という作家が既に大成功を収めた人間なのに、何処かこころ満
たされない空の部分があり、それを埋めようかという風に詞がどんどん深くな
っていることを感じられる。そのストイックな姿、空からの引力に吸い寄せら
れる魅力が今作だ。