証言 細野豪志 「原発危機500日」の真実に鳥越俊太郎が迫る
この本の企画は、ジャーナリストの鳥越俊太郎から持ちかけられたものではなく、細野豪志衆議院議員から持ちかけけられたものだという。
何故、多くのジャーナリストがいる中で、鳥越俊太郎氏なのか。この疑問について、「まえがき」で、鳥越氏は、細野氏に問いかけているが、結局、理由は述べない。「迷ったんですよ。」と言うのみである。
さて、東日本大震災の福島原発事故直後の官邸、東京電力での対応について、本書では、たぶん、嘘偽りなく、述べていると思う。私は、正直、東日本大震災の福島原発事故後の政府・東京電力の対応について書かれたメディア側のルポルタージュ等をほとんど読んでいないので、正否の判断はできなかった。
もし、昨年の東日本大震災の福島原発事故のメディア側からのルポを読んでいるなら、その内容と合致しているか否かを確かめてみるのも良いかもしれない。
特に、本書の最後の大飯原発の再稼働、今後のエネルギー政策などについては、なかなか興味深かった。
大飯原発の再稼働については、大前研一氏の検証、また、サード・オピニオンを確認して、決定した等の発言が特に興味を引いた。
また、「日本は、世界のなかでは非常に珍しいんですが、原子力をはじめとしたエネルギー問題が安全保障から切り離されて論じられています。」との細野氏の発言も気になったところです。
本書は、細野氏の政治家としての宣伝という趣きはそれほどしなかった。
「政治家として歴史の法定に立つ」覚悟という言葉(中曽根元首相の言葉)が心に残る。
パラシューター―国会をめざした落下傘候補、疾風怒涛の全記録
落下傘候補として伊豆に降り立ち、見事初当選を勝ち取るまでの波瀾万丈の記録。「家の周りの土筆を食べ尽くして全滅した」話など、涙なしには読めません。全編に渡り、筆者の前向きさ、ひたむきさ、真面目さが貫かれており、正直感動します。
最近では当選回数を重ね、党内でも若手幹部となっているようですが、どうかこの最初の純粋な気持ちを忘れずにいてほしいものです。
原発危機 官邸からの証言 (ちくま新書)
もし東電の言うように全面撤退ではなく部分撤退となっても、ハッと気付いた時には、我も我もと撤退して「そして誰もいなくなった」状態になって、全機アウトの状態になっていた可能性が高いと思います。この本は事故当時の官房副長官だった福山哲郎氏が「あまりにも事実と異なる批判が多く、震災直後の対応を記録として残したい」として4冊の福山ノートを元に書いたとしていますが、冒頭の清水元社長が菅総理に「結論から申し上げます。撤退などありませんから」と伝えると、「はい、わかりました」と頭を下げるシーンは他の官邸メンバーにも記憶されてるいるということで、薮の中の側面もあるでしょうが、こちらの蓋然性が高いと感じます。
東電から派遣された武黒フェローもベントの遅れについて要領を得ないことばかり言って、直接、現地の吉田所長と話しをさせろと要求すると、実は衛星電話の番号も知らずに、東電本店との伝言ゲームになっていたことを知ったというのにも驚きました。菅総理のヘリコプターでの訪問も東電側から吉田所長は知らされていないなど、東電内での意思の疎通もおぼつかない状況だったといいますから(p.70)、ぼくが菅さんの立場だったとしても、一度は怒鳴り込んだと思います。しかも、東電から官邸に派遣された武黒フェローが3号機に海水使うのを躊躇している、というのを吉田所長が「官邸が躊躇している」と勘違いしたとか、いくら混乱状態にあるとはいえ、東電内の意思疎通のなさは唖然とさせられます(p.94)。
こうした混乱した状況の中で撤退を匂わせてきた東電に対して「1号機から4号機まですべて放棄すれば、大量の放射性物質によって東日本全体がだめになる」「放っておけば外国が日本に来て原発を処理する。そうしたら日本は占領されるぞ。何としても撤退などあり得ない」と東電に乗り込んだ管首相の言葉は、この本の白眉だと思います(p.108)。