フィンランド民謡の花束
素朴な味わいが感じられるフィンランド民謡が31曲収録してあります(「湖畔にて」を5つの民謡として勘定しています)。大らかであり、祖国の自然を愛する人々の気持ちがどの曲にも感じられました。
4曲目の「我が故郷スオミ(フィンランド)」の歌詞には母国への愛情が詰まっているのが分かります。大国ロシアの圧政に苦しんだスオミの人々の願いと希望がここに詰まっています。シベリウスが交響詩「フィンランディア」を作ったように、故国への願いが民謡の奥底に通奏低音のように流れているのを感じ取りました。敬虔な讃美歌のような風合いは、この曲の持つ意味合いを強めているようです。
冒頭の5拍子の「歌いましょう」は発声も民謡風にしていますので、人々の日々の暮らしや自然の香りが伝わるような曲でした。とても興味深く聴きました。
「ここ北極星のもとに」は切ないメロディとハーモニーに彩られた曲でした。悲しい響きは、厳しい自然環境と共存しながら日常を送る人々の希求する思いが込められているのでしょう。良い曲でした。
「青い色赤い色バラの花」は、特徴ある和声と掛け合いの合唱が美しく響く曲です。マジャール語で歌われるハンガリー民謡との親和性を感じました。流石にアジアの血をひく民族の出自は争えないことを感じた1曲です。
長く続く冬の厳しさを歌った歌も、雪が溶けて遅い春を待ち望む歌も、短い夏を慈しむような歌も、いずれも自分達の故郷への熱い思いが込められています。
タウノ・サトマー指揮のカンドミノ合唱団は、声を聴く限り若いメンバーで歌われているようです。定評のある合唱団のようですが、ベルカント風の発声ではなく、少し東欧の合唱の色合いも感じられます。
北欧は合唱王国です。お隣のバルト三国は有名な合唱祭を設けていますし、スウェーデン放送合唱団はヨーロッパを代表する合唱団という合唱の盛んな地域ですので、心から歌を愛する気持ちが伝わってきました。
1990年2月、エスポー市オラリ教会で収録されたものです。教会の豊かなホールエコーを拾っていますので、聴きやすく美しく響いていました。
夏至【字幕版】 [VHS]
「シクロ」路線ではなく、「青いパパイヤの香り」と同じ世界です。
しっとりとした映画。3人姉妹のそれぞれの生活、夫や恋人との関係などなどが淡々と描かれます。説明は少し少ないくらいなのに、テンポよくストーリーが進んでいくので、どんどん引き込まれてしまいます。
いつも雨が降っていたような、、、そんな記憶が残る映画です。
夏至祭 (河出文庫)
「僕はどうしても失くした羅針盤を探し出したいのさ。」ー
月彦が祖父から譲り受けた銀時計は夏になるとどうゆうわけか、時刻が狂いだす。その理由を今年こそは突き止めようと月彦は考えていた。ある日、野ばらの垣根に囲まれている空家の前を通りかかった月彦は、中を覗いて見たいと思う欲求にかられ、そこで2人の少年に出会うことになる。薄水青のリボンを結んだ黒い瞳の美しい少年「黒蜜糖」と、白いシャツブラウスを着た端正な顔だちをしている「銀色」。この2人は銀時計の謎を解く重要人物だった。月彦は2人に出会い、忘れられないひと夏の思い出を作ることになる。黒蜜糖と銀色と云う少年はいったい何者なのか?長野まゆみさんが描く少年達のファンタジー。