Throbbing Gristle Bring You...20 Jazz Funk Greats
TGと言えばまずこのアルバムということになるでしょう。誤解を恐れずに言えば、それだけこのアルバムは、ここまでのノイズ、実験音楽、インダストリアル・ミュージックでありながら聴き易いアルバムになっている。「聴き易い」といっても彼らのアルバムの中ではということですが。そういうこともあって非常に有名なアルバム。
このアルバム、これまでのファースト、セカンドとは大いに趣が違う。一曲一曲が「曲」らしいものになっている。同じようなノイズの雨あられではなく、それぞれの曲によって曲想がすごく違う。リズムマシーンが強烈な非常にアグレッシブ曲あり、何だかシンセの音色が静かに流れるだけのような曲ありである。なので、アルバムとして聴くとバラエティに富んだものになっている。と、同時にトータルな印象を与える。そうして、これまでと同じように実験的な態度は微塵も変わらない。歌詞も初めて掲載。TGのピークであり、ロックの名盤の一枚である。この一枚が無ければ、今の音楽シーンは相当違ったものになっているはず。
ファーストは「アート集団です。こんな音楽もやってます」みたいなアルバム。セカンドは「音楽は私たちの活動の重要な一部分です。これを聴いてください」みたいなアルバム。そうして、このアルバムは「私たちは音楽を中心として活動しているアート集団です。これを聴いてください。いやでも聴かせますよ」みたいなアルバム。TGといってもいろんな印象を与えるアルバムを発表していることに今回のシリーズであらためて認識した次第。
曲想から考えて、ファーストが、ジェネシス・P・オリッジ中心としたバンドなら、ここではおそらく他のメンバーも同じくらい発言力を持っている状態になっていると思われる。で、そうなると、バンドの運命は、お決まりのとおり。TGのスタジオアルバムは、これが最後。解散を迎える。ぎりぎりの人間関係だったんだろうなあとも思う。ちなみに彼らの解散のきっかけはヌード・モデルもやってた女性メンバーの奪い合いによるもの。ストイックな印象を与えるTGだけど、まあ、人間だったんですね。下世話な話ですけどフラれたのは、ジェネシス・P・オリッジです。
アルバムジャケは、自殺の名所で彼らメンバーだけが微笑んでいるモノが表、裏のジャケでは、彼らの前に死体みたいなのが転がっている。ちょっと悪趣味に過ぎるけど、前作と同じくキリスト的ヨーロッパへの彼らなりのNO、「背信」ということでしょう。アルバムタイトルも資本主義社会をからかっているようなもの。もう、滅茶苦茶。
このシリーズ、この盤もリマスターは最高。非常に音が澄んでいます。ボーナスCDのライブは本当にぶっ飛びものです。かっこいい!
D.O.A. The Third And Final Report Of Throbbing Gristle
美醜とは紙一重。
ヌードモデルを含む4人のアート集団
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工場廃液ノイズ→天使と悪魔のシックスナイン
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脈打つ男根の面目躍如