強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)
タイトルは薄っぺらい週刊誌のようだが、サブプライムに端を発する現在の金融恐慌を、ウォール街インサイダーからの視点で平易に説明している。
複雑な社会問題には、多様な説明の仕方があるのが常であり、世界バブルの崩壊が一冊で説明できるはずはない。しかし、ウォール街の実情を知らない一般人にとって、この本は新しいモノの見方を提供してくれる。そういう意味では、専門用語を多用し過ぎず、平易にウォール街の強欲資本主義を説明する点に、この本の価値があると言えるだろう。とくに、投資銀行の倫理観の麻痺、アコギな金儲けの手法に関する具体的な描写には、リアリティがある。
論理展開の飛躍が目につかないわけではないし、最終章の「バブルにいかに立ち向かうか」は、持論の強引な展開が少しきついかも知れない。したがって、ウォール街に身を置く投資銀行家による、ウォール街的価値観を否定する主張だという前提を持って、読んだ方が良い。
金融恐慌への一つの視座を得たい門外漢(私を含める金融業以外の方々)であれば、読んでみても良い本だと思う。