愛の領分 (文春文庫)
落ち着いて読める長編作品。決して映画化などにはならないだろう。
興奮や感動,涙などとは異なる,長い時間の流れの中に横たわる深い男と女の情愛や嫉妬を,ていねいな構成とやわらかい言葉,そして時に情熱的に描かれてる。
どんな恋をすれば幸せになれるのか。どれだけ愛しても一緒になれない二人。障害があっても,いや,あればあるほど求め合う心。それらは全て愛の領分のせいだとこの作品は言っている。
愛に領分があるとは思えないが,愛にも光と影があるという説明は分かるような気がする。
手元に残しておきたい大人の一冊である。
ライフ・アンド・デス
凄腕の暗殺者・榎波は、激情にかられて暴力団員の男を射殺してしまった。元弁護士の藤立は、殺害された男の仲間から事件の調査以来を受けて、榎波に迫っていく・・・。息をもつかせぬ果てしなき追跡劇に魅了される。ノンストップ・サスペンス。
読ませる。
敗者復活 (徳間文庫)
何か深い感銘を覚えるとか、頭に新たなシーンが刻まれるという話ではないのだけれでも、読んでいて引き込まれるものがある。
まず、設定。舞台はバッティングセンターであり、日常目にする風景だ。しかし、バッティングセンターで日常的に過ごした人は少ないはずであり、その意味では非日常的なものを感じる。
そして、主人公の生き方。身の丈にあった生き方、性に従った無理しない生き方。それも、もともとは自分の限界を越え、ストレスを抱えながら仕事をして、ある契機を境に行き着いた生き方。しかしながら、決して世捨て人という訳ではない。自身の感情に逆らうことなく熱くなるときもあり、人との繋がりも疎かにしない。そして、経済的には豊かな方である。
ある程度、サラリーマンを続けると、目指してみたい姿の一つとして頭に浮かんでもおかしくない生き方だ。肩に力が入っていない身の丈にあった生き方には非常に共感を覚える。しかしながら、繰り返しになるが、何か深い感銘を覚えるとか、頭に新たなシーンが刻まれるという話ではない。