Gradation'12
レノン&マッカートニースタイルの今時珍しいタイプの3人組であり、その楽曲のセンスのねじれ具合たるやさらに珍しいわけで、そんな彼らの何気なく聴いていると思わず驚いて聴き直してしまうようなソングライティングが十二分に楽しめるアルバムである。
のだけれども、やはりこのアルバムに関してはとにもかくにも「リリー」ではないだろうか。
冷静に考えれば充分珍しいタイプの曲のような気もしないのでもないのだが(苦笑)、ANATAKIKOUのアルバムの中に入ると少し浮き上がって見えるこの「リリー」の普遍的な調べには心をどれだけ揺さぶられたことか。
非常に人に薦める際に相手を選ぶこのバンドの中で、珍しく誰にでも名曲だと自信を持って聴かせられる大名曲だ。もちろん、アルバム自体も実に素晴らしい。のだけれど、やはり少しは人を選ぶところがあるような気はしないでもない。
YELLOW MATADOR
優しい旋律としみじみした歌詞が魅力的である。
ボーカル要員が二人おり、ぞれぞれ自作曲のメインボーカルを取っているが、
どちらも軽やかで暗めのパステルカラーを思わせる。
簡素で明るいギターポップ調ロックが好きな方にオススメの一枚。
きいちご
新しい体制になってからの、はじめてのアルバム。
一時はどうなることか心配でしたが、3年半ぶりのCD嬉しすぎます。
“奇異”と“稚児”で「きい ちご」という、さすが
筋縄ではいかない彼らの音を思う存分聴ける1枚だと思います。
「ぼんやり、雨」のまさにぼんやりと見える情景の切なさや、
「てのひらに」の映画を1つ見終わったような余韻。
そういう胸にキュンと響く曲もあれば
「アニマルはマニュアル」はちょっとクスっとするけど
元気をもらえるような曲、「RUNAWAYFROM」では
かっこよくて震えるような中毒性を感じたり。
「曖昧な天国に捧ぐ」や「 木苺の夜と戯れ」は
今までのアナタキコウにはないアプローチなんではないかと思います。
とにかく全曲全部詳しく書きたいくらい、
それぞれの味があって、ワクワクして切なくて
とても愛おしくて、何度も何度も聴きたくなるのです。
アルバム全体的にも、音がシンプルになり
その分の、すき間や息づかいなんかが、
とってもリアルに、ライブに感じられる、
まさに「今」の彼らの音。
一人でも多くの方に響くことを願ってやまないです。