志ん朝復活-色は匂へと散りぬるを ぬ「高田馬場」「甲府い」
「高田馬場」…戦後の闇市での露天商の巧みな弁舌商法、現代の実演販売などを入れて笑わせながらも、素人芸を忌み嫌う志ん朝の心意気がうかがえる枕。がまの油売りの口上をつらつらつらっと演じてみせる場面では、語り口に思わずCDデッキの前で拍手をしてしまう見事さ。
野次馬根性丸出しの江戸っ子達のやりとりでは、そのちゃらんぽらんさに大爆笑。「おい、じょうだんじゃあねえよ~」と登場人物とともに叫んでしまうような、落ち。高田馬場、志ん朝最高!と唸る一席。
「甲府い」…人情噺得意の志ん朝真骨頂。他の噺家さんが演っているのを何度か見たが、どちらかというと、「良い人しか出てこない」退屈な演目だった。しかし、志ん朝が演じると、その「良い人たち」の、なんと可愛げのあることか。その可愛げが、この噺を素直に、昔話的に「めでたしめでたし、よかったな」と思わせるものに仕上げている。
2つの噺あわせて、志ん朝の魅力を存分に味わえる1枚。