わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫)
後藤田正晴、という人のひととなりが随所にうかがえる。あさま山荘事件の折、批判に囲まれた疲れきった著者を普段の厳しい姿勢からは意外とも思えるような優しい言葉で慰労したエピソード、著者の夜の悪癖を言った人間に対して「奴は自分の金で綺麗に遊んでいる」とかばった逸話など本質的に思いやりのある人柄が伝わってくる。
また、内閣五室制度発足式典の後藤田官房長官の五訓、国益を思え、悪い報告こそせよ、勇気をもって意見具申せよ、自分の仕事ではないとは言うな、いったん決定が下ったら従え、はどこの組織でも肝に銘じるべき訓戒だが、官房長官の職にある人が改めて述べた点に凛としたものを感じる。
他にも後藤田正晴という人の人間味にあふれるエピソードに溢れており、カミソリと呼ばれた、かっての首相候補の人物像が浮きでる。ただし、こうしたものにはつきものだが、著者の人物評にあらわれる価値観がやや突出、どちらが主役かがわからなくなるきらいはある。
情と理 -カミソリ参謀回顧録- 上 (講談社+α文庫)
ページ数多いので、読むのに抵抗あるが、
読んでみると、官僚、警察、政治家の立場がどういうものか分かり、
読み応え十分の内容であった。
後藤田さんを、何人もの首相が
懐刀とした理由が分かる気がする。
また、本書には様々な事件の内情が述べられているが、
真摯に事にあたっているように思える。
(多少、美談となっているかもしれないが)
厳しいことを、言っているのだけれど、
情を感じるのは、やはり後藤田さんの人柄なのかと感じる。
こういった、人間味があり、骨のある政治家は今の時代には、
出てくることはないのかなと、嘆いてしまうが…
お薦め本です。
情と理 -カミソリ参謀回顧録- 下 (講談社+α文庫)
官僚の世界では自らを自治官僚と警察官僚の両生動物と称し生き抜いた後藤田正晴の口碑の下巻。政治家の世界では田中派から中曽根内閣の官房長官として活躍。政治理念は国内治安ではタカ派、国際安全保障はハト派と実に変幻自在に大正〜平成までを生きた「偉人」のオーラルヒストリーの傑作。上下巻を通読されることをお薦めします。