聖地巡礼 (講談社ノベルス)
新書版で224頁の中短編集で以下の作品が収められ
ています。
グリーンスリーブス・・・書き下ろし
カンタペリー・テイルズ・・・小説現代2008年9月号増刊号「メフィスト」
ドッペルゲンガー・・・書き下ろし
ジョン・ドゥ・・・書き下ろし
シップ・オブ・テセウス・・・書き下ろし
著者の長編はねっとりした怖さを感じさせ、読み
終わった後にも引きずる作品が多いですが、それに
比べると軽めであっさりした怖さの作品ばかりで読
みやすいです。
著者の作品を初めて手に取る方にお勧めします。
ナルキッソス ~もしも明日があるなら~ Portable DXパック(オフィシャルブック&「セツミ先生」の聖地巡礼マップ同梱)
この作品が扱ってるテーマは「生と死」
それを一貫して、とにかくシンプルに、そして真摯に描いています。
何がいいとか悪いとか、そういう二極間で昇華しきれないような問題。
本当に考えさせられます。
物語についてというより、物語から感じた事に対して自分はどう考えるのか、という意味合いのほうが強いかも知れません。
死とはなんでしょうね。ある作品で、死に様というのは生き様よりも遥かに大事である。といった内容の台詞がありました。
ゆえに生き様よりも死に様にこそこだわらなければならない。
生きているのと死んでいないだけは違う。生きる意味・意思が無ければ「生きている」とは言えない。
だからこそ、自らの意思で「生きる」ためには死ぬさえ選ぶ。
そういえば、本作と同じく主人公が死病に冒されてるという設定の「こなたよりかなたまで」 でも同じような事を言ってました。
例え行き着く先が「死」であろうと自分で考え自分で決めた道を進むという事は医学的な物とは別な意味で「生きている」と言えるんでしょうね。
聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヶ所めぐり
個人的に思い入れのある作品が少ないのでどうかなと思ったのですが、これは当たりでした。
聖地巡礼は作品を好きになってからその舞台を訪ねるというのが一般的ですが、自分の知っている場所を舞台にした作品があるということから入るのも、これはアリだと気づかせてくれます。神田古書街、箱根、京王線沿線、秋葉原、どれもよく行く場所だけに、読後には風景が違って見えたりします。
また、飯田線や芸備線、阪堺電気軌道なんかはこの本のおかげで乗りに行きたくなる。作者は鉄分が豊富ななんだろうか。
けいおんやらき☆すた、ハルヒもない。でもエヴァはある。これで大体、この本の出された時期がわかるというもの。
その意味ではなかなか微妙ですが、それぞれの制作元から資料提供を受けているのは力の入った企画といえます。逆に言えば巻末の「その他の聖地」は取材協力を得られなかった作品なんでしょうね。取材・撮影協力に都立神代高校が入っているのは立派。よく高校側が理解を示してくれたものです。まだ、ハルヒの西宮北高のようにファンの暴走がなかったからこそかもしれませんが。あとは中央大学の寛容さも特筆できます。
できることなら、最近の作品をフォローした続編がでればいいのですが、ぜひ、出して欲しいです。
聖地巡礼NAVI―アニメ&コミック
サザエさんからサマーウォーズまで良くも調べたものです。一つ一つの紹介は数ページで、地図と現地の写真数葉と物足りない。アクセスや巡礼のルートの紹介が主で作品自体に深くふれることはありません。なにしろ一番多くのページを割いているハルヒやらき☆すたですら4ページです。たぶん、数が多いのと古い作品も網羅しているのとで作品自体のカットはなく、精々DVDのパッケージの写真くらいしかありません。ですが、好きな人は個々の作品は持っているわけだし、これはこれで一つの割り切りだと思います。むしろ編集方針が一貫していて好感がもてます。
本自体はオタク臭さもなく社会人が出張のついでに聖地巡礼をするときい持っていっても恥ずかしくない。これは結構、大事なことでしょう。オタクは学生さんだけじゃないし、むしろお金を持っていてマーケットを支えているのは社会人の方ですから、良いところに目をつけたなと思います。
もしかしたら、地方自治体や商工会議所とかが町おこしのねた本に使うことも考えたのかも。そうするとビジネス書と言ってもいいかもしれない。そもそも作品が好きで巡礼をしようという人は、作品を分析して自分でグーグルアースや掲示板かなにかで聖地を特定するだろうけど、興味のない作品の舞台に興味を持つことはあまりない。この本を手にとるのはオタクではないけどはやりものに興味のある人でしょう。
だから、純粋に聖地巡礼を紙上で体験したい人には向いていません。そういう人には「聖地巡礼アニメ・マンガ12ヶ所めぐり」という本のほうがいいでしょう。こっちは写真もカラーで作品からのカットも豊富です。なにより12作品に絞っているので質量ともに十分です。そのかわり古い本なのでハルヒもけいおんも載ってません。その意味ではこっちの続編がでればバランスがとれていいんですがね。