ザ・フューチャー・エンブレイス
スマパン解散から早5年、
ジミーと共にZWAN結成も、アルバム1枚であっけなく解散。
ビリーもやっとあのモンスターバンドの呪縛から解き放たれた感がみられる。
スマパンは言ってみれば、ビリー、イハ、ダーシィ、ジミーの4人の危うい均衡が生んだ奇跡の音楽だった。だから、メンバーの脱退&復帰、新メンバー加入などの事件で(もちろんそれだけじゃないだろうが)結果的に解散に至ったのだと思う。
さて、初のソロ作品は
ソングライター、シンガーとしてのビリー・コーガンの才能に直接触れられる良作です。
聴きやすい美メロと、ビリー独特のしゃがれ声が耳に心地よい。
でも、もうどうしようもないのはわかってはいるが、
それでも思わずにはいられない。
あのThe Smashing Pumpkinsをもう一度みたい…
ザ・レイテスト
他の方も概ね好評価されているように、初期Cheap Trickの香りがプンプンする快作です。
Sladeのカバーである2や以前から未発表曲として有名だった3、PEPSIのCMソングでおなじみ7など聞き覚えのある曲が多いこともあり、正直未発表曲集なのかと思いました。古くからのファンは4のタイトルを聞いただけでCD屋に走ることでしょう。
Lap Of Luxury以降、当然のごとく"はずれなし"と言える作品を出し続けてきましたが、あきらかにそれ以前の作品群とは色が違っていました。これが時代の変化、円熟味ってことなのかな、などと自分に言い聞かせてきたものの、どこか心から納得できないものがあったのですが、デビュー32年目というこの時期にきて、まさかこれほど強力なアルバムをリリースするとはビックリです。
昨年のBudokan Againで5本ネックのギターをしんどそうに抱えるリックの姿に年齢を感じずにはいられませんでしたが、音のほうは若返る一方で完全に全盛期の姿を取り戻し、嬉しくて涙がでます。音の印象としては、強いて言えばIn Color(Albini Version)が一番近いかなという感じでしょうか。若い方にも是非お勧めしたい傑作です。
シー・マイ・フレンズ
私は、前作『キンクス・コーラル・コレクション』のレヴューで、次のように書いた。
「キンクス」の名を使ったアルバムを作ったことがレイの再結成の気持ちが高まってきたことの表れなのか、それともそこにソロ作も入れたことが「自分こそがキンクスだ」もしくは「自分ひとりでもキンクスの音楽をやっていける」という気持ちの表れなのか、いろいろと憶測してしまう。次の作品が気になるアルバムでもある。
そして、実際にリリースされた「次」のアルバムが今作だ。オリジナルのソロ新作かキンクス再結成実現かを期待していたのに、またもやセルフ・カヴァー集とは、少々肩透かしを食った気分にもなる。ただし、前作が終始一貫して合唱団とのコラボでリード・ヴォーカルはレイ自身だったのに対し、今作は各曲でロック系のさまざまなミュージシャンと共演している。前作と対になるセルフ・カヴァー集ととるのがよいのかもしれない。重複する曲を聴き比べるのも興味深い。とはいえ、ハードなロックでゴリゴリ押しているのかと予想していたら、思っていたほどではなかった。
今作のブックレットには、それぞれの作品に関するオリジナル発表当時の思い出と今回の録音をめぐるエピソードがレイ自身によって語られていて、それも興味深い。(日本版には和訳も付いている。)それを読み、それぞれの曲での共演を聴くと、レイの作ったキンクスの曲がいかに幅広く影響を及ぼしたかがよくわかる。
総じて曲のアレンジも良い。この録音の後この世を去ったアレックス・チルトンの「エンド・オヴ・ザ・デイ」などは、アレンジも歌もとてもかっこよい。ただ、たとえば「セルロイドの英雄」の前作と今作のヴァージョンを聴き比べると特に思うのだが、やはりレイの歌はどんなアレンジにせよレイが歌うのが基本的には一番しっくりくる気もする。今作はジョン・ボン・ジョヴィ&リッチー・サンボラとの共演だが、サンボラのギターはよいものの、歌の方はレイがリード・ヴォーカルを受け持つパートになって初めてこの曲に漂うノスタルジックな美しさが感じられるように思う。メタリカと共演した「ユー・リアリー・ガット・ミー」のようなハードなロック系の曲やパロマ・フェイスと共演した「ローラ」のような一癖ある奇妙な歌も同様で、決して今作のアレンジが悪いというわけではないのだが、やはりレイが歌っているほうがその曲の持つ味を存分に味わえる気がする。
それにしても、最近ブライアン・ウィルソンやピーター・ゲイブリエルやスティングといったヴェテラン系のミュージシャンたちが他人の曲のカヴァーや過去の曲のセルフ・カヴァーのアルバムを出すことが続いているのが少々哀しい。優れたソングライターの新譜はやはりオリジナル新作を期待してしまう。このアルバムも、全体としては決して悪くないのだが、その渇きを癒してくれるものではない。次こそ(ソロであれキンクス再結成であれ)素晴らしいオリジナル新作を期待したい。
全体としては星4つと5つの間ぐらいだが、レイならきっとオリジナル新作で星5つのアルバムを作れるに違いないとの期待も込めて、今作は星4つにとどめておく。
なお、日本盤はSHM−CDのうえ、マンド・ディアオとの「ヴィクトリア」およびアルノとの「モーメンツ」を加えた全16曲。どうせ買うなら日本盤の方がお薦め。