山田洋次・名作映画 DVDマガジン 2013年 1/22号 [分冊百科]
この商品は、購入を迷っていたため、書店で手に取って実物を確認してから購入しました。
創刊号には、「幸せの黄色いクリーナー」というファイバークロス・ミニタオルのおまけが付いています。(また、私が購入した書店だけの特典かもしれませんが「ビニール・バッグ」も付けてくれました。)
本DVDには、特典映像は55分、「山田監督ロングインタビュー」26本シリーズガイド、メニュー画面あり、『東京家族』予告編、次号予告『キネマの天地』予告編、10号までの予告編、チャプターリストあり。冊子には、山田監督最新作『東京家族』の鑑賞割引券付、劇場鑑賞券懸賞案内あり。
公開時ポスターの復刻版、あらすじ・解説、キャスト紹介、山田洋次監督が語る映画のツボ、桃井かおりさん、倍賞千恵子さんインタビュー、ロケ地・舞台を旅するetc
本作は、高倉さんのキャリアの分岐点、転換点であり、高倉さんに女性ファンが増えたきっかけ、高倉さんの任侠映画に全く縁がなかった層にもファンを増やした、記念すべき映画だと思います。
私にとっても、高倉さん、倍賞さんを見直して、ファンになったきっかけの作品でした。
本作は、映画製作当時の風潮と世相を嘆き、風刺し、当時の一部の若者の軽い生き方を、武田さんと桃井さんが演じた二人の男女で表現、ひたむきに生きて人を真剣に愛する大切さを、高倉さんと倍賞さんが演じた夫婦(男女)で表現していると思います。
人によって評価が分かれる部分(武田さん演じる若者の下品さと、高倉さんが短気を起こして大罪をおかす部分)があると思いますが、ラストシーンだけは、何度観ても心が揺さぶられます。倍賞さんが出演するシーンは短いのですが、高倉さんと初めて言葉を交わすスーパーのレジでの会話、表情、仕草は、高倉さん共に、絶品の演技ではないでしょうか。
DVDパッケージの写真は、今までのDVDとは異なっている点が良いと思います。
あの頃映画 幸福の黄色いハンカチ デジタルリマスター2010 [DVD]
この映画は、1977年に劇場公開されたのですが、僕は当時二十歳。武田鉄矢さんのコミカルな表情と、幼い桃井かおりさんの演技を見て、ただ面白いだけのストーリーとしか覚えていませんでした。・・が、50歳を過ぎて、社会を一定程度経験してきた僕にとって、この映画は懐かしいだけでなく、感動に値する内容になっていました。
今では珍しい、マツダの赤のファミリアと炭坑町の長屋の風景は、昭和を感じさせます。
ストーリーはわかっているのですが、途中で涙が出て来て、結局最後まで止まりませんでした。しかも終わった後も、感動が胸に迫り涙がこみ上げてきました。風に揺れるたくさんの黄色いハンカチ。高倉健さんと倍賞千恵子さんの再会時の、あの光景が瞼を憂い、僕の胸の中で脈を打っていました。
この映画は山田洋次監督の傑作で、名作といってもいいと思います。
KADOKAWA世界名作シネマ全集〈第12巻〉山田洋次監督セルフ・セレクション「家族」「幸福の黄色いハンカチ」
このシリーズを1巻からずっと購入してきている関係で、この商品も購入しました。
正直、山田洋次監督というと「寅さんシリーズ」というイメージが強かったのですが、
(寅さんシリーズも1作としてまともに見たことが無い初心者…)
折角購入したのだからと腰を据えてこの商品に収録されている「幸福の黄色いハンカチ」
と「家族」を初めて鑑賞しました。…素晴らしい。
個々の作品の良さは改めて私のような者が語ることでは無いのでしょう。
それに加えて、爽やかな「幸福の黄色いハンカチ」と重い「家族」の組み合わせが
素晴らしいと思います。2本続けて見てしまいました。とてもいいバランスです。素晴らしい。
個人的にはこのシリーズの中で最もお勧めしたい一冊です。
このシリーズのいいところは、こういうあまり触れたことのないジャンルにも
まんべんなく触れられるところでしょう。
幸福の黄色いハンカチ [VHS]
はずみで殺人を犯し、網走刑務所に入った男。彼は、妻に、1つとしていいことはしてやれなかった。
出所して、彼はもと妻に手紙を送る。
「まだ、俺と一緒に暮らす気持ちがあるなら、黄色いハンカチを家に掲げてくれ。」高倉健が渋い役をこなす。
一方、東京で失恋した武田哲也と、偶然電車の中で出会った、これも失恋したばかりの客室乗務員の娘。
この2人は、目的のない、北海道での自動車の旅を始める。
そして、家へ行こうか、迷っている高倉健に出会う。
家に着いて彼らが見たものは・・・
日本映画で、これほど感動させるラストは、見たことがありません。
幸福の黄色いハンカチ [VHS]
1960年代に生まれた同世代以降で、邦画が好きと言う人にはあまり会わない。その理由としてよく耳にするのは、「邦画は暗いイメージがある」という答えだ。しかし、実際には決してそのような鬱屈とした作品ばかりでなく、
心が洗われるような美しい物語も数多く存在する。「幸福の黄色いハンカチ」は、まさにそうした、見る者の心に青空を届ける、日本映画の傑作といえよう。
「庶民」という言葉が、かつてこの国には存在し、「庶民的」と呼ばれる人の暮らしがあった。この映画で描かれる世界は、まさにそうした庶民の飾りのない心の触れ合いを描いた物語である。さて、この「庶民」という言葉を辞書で調べると、「社会的特権をもたないもろもろの人」とある。ここでいう「社会的特権」というのは具体的には何を指すのか分らないが、少なくともそこには「庶民ではない特別な階級」という前提があるようで、この国がいわゆる「市民」によって建てられた「民主主義」の国ではなく、「特権階級」によって成り立ってきた歴史を示唆する逆説的な言葉のようにも思えてくる。ここでそれが良いとか悪いとかいうつもりはないが、ただ、この作品を見たときに、そうした「庶民」と呼ばれる人々の暮らしの中にこそ、日本人が培って来た大切な何かが宿っているように思えてならないのだ。
この映画を、今もう一度見ると、そこに描かれる「幸福」というものが、とてもシンプルなものに思える。社会的名声や、地位や、物や、知識ではなく、
「幸福」というのはもっと素朴な、打算のないありのままの人の心の触れ合いの中にちあったのではないだろうか。日本人はいつか、誰からか与えられた物差しでしか「幸福」や「価値」を見出せなくなってしまった。そのような物差しでしか自分の存在を測れなくなり、いつかありのままの「自分自身」すら見失ったのではないか。そして、そのような物差しで作った社会を再生産し続けた結果、行き場のない歪んだ事件を現在に引き起こす結果となったように思えるのだ。
ところで、この映画のワンシーンで、お腹を下した武田鉄矢が牧場をがに股で駆けていく後姿を笑う高倉健の横顔が映るが、どうも本気で笑っているように見えてならない。演技だとしても、このような笑顔を見せる高倉健はスクリーンの中では珍しかった。この作品は、それまでの「網走番外地」シリーズのイメージから脱却し、近年の「駅員」「ホタル」などの名演に通じる、新しい俳優高倉健の可能性を広げたターニングポイントとなる作品としても知られている。
さらに、桃井かおり、賠償千恵子、渥美清といったこれ以外はありえないとも思える絶妙のキャスティングなど、まさに日本映画の結晶といえるこの素晴らしい作品を、まだ見ぬ人にはぜひ伝えたいと思う。
この春風のように爽やかな物語には、不思議と邦画独特の湿り気がない。
ラストシーンで空にそよぐ「幸福の黄色いハンカチ」がいつの日か自分の人生にも訪れることを、この映画を見た人はきっと願うだろう。しかし、このようなすばらしい日本映画が、何故その後生まれないのか。それは「幸福」そのものを、この国に住む人々が見失ってしまったからではないだろうか。