兇弾 禿鷹ⅴ (文春文庫)
禿鷹シリーズは好きで文庫でずっと読んでいました。前作で禿鷹が死んだ時
正義の味方が出てこないこのシリーズを好きだった私はがっかりしておりました。
禿鷹のクールで悪徳なキャラは代わりの登場人物では埋めきれませんでしたが
ストーリーはなかなか面白かったです。
あの悪徳の禿鷹に迷惑をかけられつつも、変なシンパシーを感じていたのか
手を組んで復讐に動くという設定が良かったです。
あと、唐突にメインステージに登場の禿鷹の妻。魅力的でした。
裏帳簿の奪い合い、悪徳な警察関係者の暗躍。
面白かったです。
ただ、やっぱり一味足りないのです。
時代を遡って禿鷹を生き返らせてほしい・・・と思うワガママな気持ちが強くなりました。
百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)
『修羅の終わり』『烙印』など、貫井徳郎のハードボイルドの作品群に近い印象でしたが、これは単に私がそういう作品を読んだことしかないからでしょう。
殺し屋“百舌”と、白昼で主婦を巻き込んで起きた爆弾爆発事件。刑事たちと右翼のメンバー、事件の被害者など、様々な角度から一人称形式で描かれるハードボイルド・サスペンスです。
さすがは逢坂剛だけあって、各章ごとに目まぐるしく人称が変わるのにも関わらず、抜群に読みやすく、しかもストーリー、謎ともに面白い!
小さな謎が積み重なり、最後には思いも掛けない大きな謎が現れるという、このジャンルの王道を行く構成です。
○○○○など、ラストで明かしてもいいようなネタまで中盤で明かすなど、数々の謎が序盤から少しずつ明かされるので、最初からラストまで全く中だるみしないのが凄いです。
ハードボイルドやサスペンス好きだけでなく、ミステリマニアにも充分楽しめる傑作です。
さまよえる脳髄 [VHS]
この作品における脚本、演出は乱暴に過ぎます。荒唐無稽な精神鑑定、考えられない大病院の杜撰なセキュリティ、実際にはあり得ない警察の捜査と捕り物、脳の障害についての説得力のない解説等など。この辺りがもっと丁寧に描かれていたら優れたサスペンスに仕上がっていたかもしれません。とはいえ、まったくの失敗作かというと、そうでもないのです。ラストまでなかなか
面白く観ることが出来ましたし、それなりに評価したいのです。ですから尚更、秀作にもなっただろうに惜しいなあ、と思ってしまうのです。
新装版 カディスの赤い星(上) (講談社文庫)
著者がデビュー前に書き、10年経って単行本となり、その後20年して今回の新装文庫本が出たそうです。
主人公の軽いノリの冗談や皮肉には、上巻の半分くらいまで違和感を覚えていました。が、舞台がスペインに移るあたりから痛快にすら感じるようになってきます。
そしてラストはとても悲しい。プロローグにある「その秋、わたしは一度死んだのだった」がわかります。
いずれにしても古くささを感じさせず、今読んでも違和感なく楽しめる本です。