黴 (岩波文庫)
硯友社時代からの息の長い秋声の枯れた文業(この際代作問題など関係ない)。
笹村とお銀の別れそうでなかなか別れられない、男女の機微、
諦観あふれる筆致があじわえればこの作品は忘れられない思い出になるでしょう。
でも書評子の一押しは未完に終わりましたが「縮図」かな。
あらくれ (講談社文芸文庫)
文庫本の帯のコピーには「逞しい女の生々しい官能/自然主義文学の傑作!」と書かれています。
主人公の女性「お島」は、肉付きが良く働き者で、口八丁手八丁の商売人気質の、まさに「逞しい」女性。
ストーリーは、簡単に言うと、「お島」が何とか事業(洋服店)を成功させようとして苦労する、というようなお話なのですが、とにかくころころ境遇が変化するのが特徴です。
夫、仕事、住む所、経済状態、などなどが、激しく移り変わっていき、人物の心理などはあまり深く書き込まれることはありません。
この作品は、読売新聞に半年にわたって連載されたそうですが、こんなに毎回主人公があっちに行ったりこっちに行ったりしていたら、一日読み逃した人はもうストーリーに付いていけなくなったかも。
一章が二頁ずつくらいの短さですので、細切れにしか読書の時間が取れない方に、おすすめの一冊です。