アカシアの道 [VHS]
新劇の名女優と云われている方ですから当然と言えば当然でしょうが、渡辺美佐子さんは芝居が上手いですね。目つきが豹変するところなど、症状をよく研究しておられます。私の身内にもいますが、ソックリですよ。ボンヤリと訳が分からないことを言っている時は、まだ症状は出ていないですね。ただの年相応の老人です。問題なのは、突然理路整然と話し始めた時。周囲を置き去りにして、一人だけ数十年前にスリップしていますから。第三者がそこだけを見ると、実にシッカリしたお年寄りに見えてしまうんです。周囲の無理解にもつながる、厄介な症状です。
身内にいるせいもあって、この種の映画は機会があれば見るようにしていますが、事情は人それぞれで違うでしょうが、介護する側の状況については、この映画が、これまでに見た中では最もリアルな印象を受けました。都会で独身キャリアとして颯爽と生きている人が増えているようですが、親がああなってしまうと、一人で抱え込まなくてはならない地獄に追い込まれるのが現実ですから。「親子の絆」なんて甘っちょろいことを言っている場合じゃないですよ。最近でもそういうメロドラマをよく見かけますが、そんなに甘くはないです、現実は。
見晴らしガ丘にて完全版
東京郊外でつつましやかにたくましく暮らす人々の
つつましやかでたくましき日常。
近藤さんの漫画に出てくる男性は女性を窮屈な殻に閉じ込め、
退屈にさせるものとして一種の記号のように描かれることが多いが、
ここでは愛すべきヘタレ小僧というか、なんだか皆可愛いんです。
サラサラ読めて、最後はキュンっと甘苦い珠玉の11篇。
探偵神津恭介の殺人推理11~密室から消えた美女~ [DVD]
近藤正臣主演の神津恭介シリーズ最後の作品。電車内での不可解な殺人、マンションでの密室殺人等どちらかというと地味な感じの作品である。
しかし、ストーリー自体は丁寧に伏線を拾って収束する形を取る本格ミステリーの王道。設楽りさ子(当時)の初々しい演技も見もの。
近藤正臣がいつになく気障な神津恭介を演じていて、最高だ。昨今のライトな2時間サスペンスと比べて丁寧な作りがなされている。地味だが、有終の美を飾るにふさわしい作品。
戦争と一人の女
元女郎の妻の戦争を通した、「え?これが戦争中のはなし?」という一冊だった。
私が今まで聞いた戦争体験は配給で貧しい暮らしで空襲が怖くて・・・という、
この一冊でいっきに覆されたような気がした。
主人公である彼女が元女郎ということが物語をとおして
彼女の得意であり、コンプレックスでもあるようだ。
おなじ種類の女として興味深い。