もうずいぶん前ですが、始めてケルト音楽に触れるきっかけになったCDにこんな邦題がついていた記憶があります。それがNightnoiseとの出会いでした。
最後のアルバムである「The Whitehorse Sessions」が97年の発売。それから約10年がたって、久々に発売されたのがこのベスト盤。その直後の2006年7月8日に、Nightnoiseの実質的な要であったMicheal O'Domhnaillが永遠の眠りにつきました。追悼の譜、といってもよいのかもしれません。
もう彼らの新しい作品を望むことはかないませんが、残された音楽の素晴らしさには変わりがありません。今聞いても色あせることのない美しい贈り物に、心から感謝したいと思います。
他のナイトノイズのアルバムにも言える事ですが、アルバム全体の雰囲気が見事に纏め上げられており、安心して聴き通せる一枚です。静と動がバランスよく、退屈しません。 ライブにありがちな、勢い先行のいい加減さも無く、トラックの全てがとても完成度が高いと思います。 特に二曲目のshadow of timeの芯の通った歌声や、九曲目のthe criket's wicketの、安らぎに満ちた二曲はとても素晴らしいです。 優しすぎず、強さを伴った音楽。しゃんとしていながら安息を得たい時や、夜に一人でじっくり自分を見つめ直したりする時にはこのアルバムがお勧めです。
最後の『リヴァーダンス』の演奏(キース・ロックハート指揮ボストン・ポップス・オーケストラ)に、アルバムの他の演奏とは趣の異なる違和感を感じましたが、それ以外は、とても満足できるハイ・レベルで個性的な歌と演奏揃いで、ケルティック・ミュージックの魅力を存分に味わうことができました。
幻想的な曲あり、リズミカルなダンス曲あり、日本の民謡を思わせる懐かしいメロディーあり、胸にしみじみ沁みる哀愁を帯びたフルートの独奏あり・・・・・・。ケルト音楽の幅の広さと奥の深さが感じられる選集であり、これは実に質の高いアンソロジー・アルバムであるなあと感心させられましたね。
透明な静けさを感じるオンヤ・ミノーグの歌い口に惹かれた『サイレンス』、思い出のアルバムをめくるように懐かしい気分に浸った『キャリックファーガス』(歌うのは、ブライアン・ケネディ)、マジカルな呪文でも耳にするような、印象深い小品『フィヌァラ』(ナイトノイズのコーラス)、この三曲がなかでもよかったなあ。心を揺さぶられるものがありました。
期待以上の聴きごたえがあって、改めて、ケルトの音楽の素晴らしさに触れ得た気がした一枚です。
多少音楽に詳しい人でもこのグループ程言葉での的確な表現が難しい音楽はないと思う。 一般の人ならこのサウンドが何であるか言葉では想像さえつかない人も多いに違いない。 かといっていざ聴いてみると、彼らの音楽そのものがとっつき難いとも言えない。要は あまりにいろんな要素が幾重にも折り重なり、多彩に練られ、深淵で唯一独自のもので あるだけなのだ。だからこの「音楽」の前では「言葉」がただ無力になってしまう。仮 にジャンル分けが必要ならば「Nightnoise」という独立したジャンルを設けるべきなの だ。 アイリッシュ系4人のアンサンブルによるこの音楽は、Tin Whistle/フルート、フィド ル、ギター、シンセ等で成り立っている。内容はインストルメンタルが殆どである。ア イリッシュ・トラッド(ケルト)をベースに、フォーキー、インプロビゼーション、室内 楽的なクラシカルアンサンブル、etcと正に言葉では言い尽くせない多彩な要素が見事に アンサンブル化されている。更にウィンダムヒルというレーベルカラーにまとめ上げた のが音楽の普遍性に効を奏している。実に深くて美しい。 個人的には、フィドルがJ・Cunnighamに入れ替わった前作と本作が名作だと思う。彼の 風貌に合わない?優しいメロディとフィドルが心を打つ。またB・Dunningのフルートの 音色は、多くのクラシカル・フルーティストが出す耳障りな音色が全くなく本来のこの 楽器の音が出ている(C管)。私はこのフルートの音色に驚いた。(尤もこの人もあのJ ・Galwayの手ほどきは受けているのだが・・・)。いつまでも聞き込める本物の音楽を 求めている人は本作と前作は、是非一度チェックしてみて下さい。 ※(余談)遊佐未森のアルバムへの参加は、お互いのチャレンジは評価するが、残念な がらマッチしなかったように思う・・・
ミホール・オ・ドーナルとビリー・オスケイの二人で結成されたナイトノイズは、メンバーの追加や入替えを行いながら、次第にミホールの故郷アイルランドの音楽(ケルト・ミュージック)の色彩を濃くしていった。 その一番の理由として、アメリカ人のBillyの脱退や、アイルランド出身のトリーナ・ニ・ゴーナル(ミホールの妹)とブライアン・ダニングが加入したことが挙げられる。 トリーナの加入により、ナイトノイズの音楽に本格的にヴォーカルが加わり、本アルバムでも明るい曲調のタイトル曲(トラック3)や19世紀に作られたアイリッシュ・バラード(トラック11)などで堪能できる。 私にとって本アルバムの白眉は、トラック7と11。 トラック7はブライアンによるフルートで始まるが、その余りに優しくどこか愁いを帯びた音色を初めて聴いた瞬間、子どもの頃の情景がいくつも浮かんだ。 ナイトノイズの要素が全て最高の形になったアルバム。 オリジナル・アルバムとしては次作の『A DIFFERENT SHORE』(1995年)が最後となった。 リーダーのミホールが亡くなり、もう彼らの新しい曲が聴けないことが悲しい。
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