正規の楽譜を購入するのは初めてです。値段が高いと感じましたが、実物を手にしてみて納得です。
日本歌曲の日本語さばきは素晴らしいのですが、低音を無理に強声で歌うのがきになりました。 日本語を伝えるためとわかりますが、ちょっと気になりました。
佐渡裕さんの記事が大きく載っていますヨ。ファンの人は必見です!
番組予告でサラ・ブライトマンのヴォーカリーズ+オーケストラのテーマ曲Stand aloneを聴いたときに、曲のスケールの大きさ・美しさにたちまち虜になって感動が電流のように体を貫いた。このような経験は、映画ミッションの「ガブリエルのオーボエ」以来だ。日本にこんなに素晴らしい曲があるということを、サラが自身のコンサートで採り上げて世界的に広めてほしいと心の底から思う。
そのStand aloneを、本作は、オケをバックにサラが日本語で(たどたどしいけど一生懸命に)歌うヴァージョン、サラのヴォーカリーズ+オケのヴァージョン、オーケストラだけのヴァージョン、そして作曲者のピアノ演奏+サラのヴォーカリーズの計4ヴァージョン収録しており、これだけで本作は買いです。
他の曲も登場人物ごとにテーマを設けることはしないで、原作・そして明治時代の全体像を的確に捉えた風格のある曲ばかりで、さながら交響組曲を聴くかのよう。本作は、音楽を通じて明治日本を駆け抜けた人々に思いをはせることができる逸品です。
「Stand Alone」を契機に森さんをよく聴くようになり、この作品も手にとりました。森さんの歌声は当に中庸の美であり、そのしなやかさにほれぼれしています。今作は題名の通り癒される祈りの音楽が集められ、勿論ラテン語・イタリア語・ドイツ語などの歌がきけます。上記のしなやかさや、ビブラートの少ないピュアな歌声ですので、旋律の美しさが一層透明感を増し、私のような初心者も心地よく車中で流しています。
唯一の日本語曲「Stand Alone」が混じっていることで、森さんの歌手としての特質がうかがえたと思います。日本語曲と外国語曲に差異があまり感じられないのです。同じ自然さのもとで彼女の中庸な声の美しさを感じられることは驚きでした。でもそれは性格のまったく違う言語を同じように歌っているからではないんですね。むしろ歌い方をベル・カント唱法から、日本語の美しさをきちんと抽出する「日本語の歌い方」に変え、違いを作ることで日本語曲の音色がひきたちます。日本語曲が在るべき自然な姿に仕上げられています。すると日本語曲も西洋の曲も対等に並立しているんですね(日本語曲の可能性を感じました)。森さんが日本語曲を西洋の曲と変わらず流麗に奏で、且つ日本語の正統な美も起こしているのは本当に感銘でした。それは森さんのしなやかな歌声が大変力を発揮していると思われます。
「Stand Alone」は『坂の上の雲』の主題から生まれた曲ですから、正統な日本語で歌われる森さんのバージョンこそ番組のテーマ「日本」を体現していると感じています。すなわち、日本語の歌い方、その美しさを魅せられることで、主題の誇りが沸き立ってくるのでしょう。助詞を制御する品格の美しさ、そして鼻濁音、また語尾をきれいに処理する美学。それでいて、「て」は引きながらも“え”母音を響かせ、遠くまで飛ばせてゆきます。また、強弱が気持ち良い森さんのバージョンですが、特に「果てなき」という言葉を発するときの力強さ、あのなかに日本人として込めた想いの強さは、日本人だから伝わり、わかる瞬間だったと思います。 日本語という音が宿す、儚さや陰影、繊細さを表現するには、ラテン語など西洋音楽をうたうためのベル・カント唱法だけでは及びません。その点、森さんはたいへんバランスがいいですよね。最も日本を美しくあらわしている「Stand Alone」でした。
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