期待した以上に面白かった。最初手に取ったときは結構厚めで、どうかなーと思ったけど、どの章もコンパクトだし、メインストーリ、サイドストーリともテンポがいいので翻訳小説なのにすごく読みやすかった♪ 乳がんというテーマを巡って、妻を支える夫の葛藤とか、悲しみとか、本音の部分がストレートに表現されていて、いわゆる美談の闘病記じゃ読めないストーリー。ちょっとコアだけど個性たっぷりのオランダのサブカルも見えてくるし、闘病記というカテゴリーでくくってしまうのはもったいないかも。好きな一節はこれ。
『僕らはもう「不運」なんて信じていない。不運など存在しないし、偶然というものも存在しない。偶然を信じるなど、人生に対する侮辱だ。だからこれも、なるようにしてなったことなんだ。なぜそうなったのかは、いつかわかるだろう。ひょっとしたら、カルメンには一時間もすればわかることなのかもしれない。そう思うと、僕はほとんど彼女が羨ましくなる。』
嬉しくなると空に浮かんでしまう少女 植物のこどもたち 恐怖の遊園地を運営する人々 未確認生物を探し続ける生物学者 この短編小説にでてくる人たちは、みないっぷう変わっています。 それが優しいときもあれば、恐ろしいときもあり 理解できないときもあれば、理解したいときもあります。 レーナ・クルーンは現代フィンランドを代表する作家で この本はそんな彼女の最新作です。 タイトルでもわかるようにレイ・ブラッドベリのテイストを感じる作品が多く 「秘密の珈琲 葦の物語」では萩尾望都を彷彿とさせる話も出てきます。 北欧ならではの不思議な静寂感が漂う話たちを楽しめると思います。 ちなみに珈琲に砂糖をいれてもブラックというのを、この本で初めて知りました。
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