連作短編風で、旅に出る事で起こる変化をテーマにしているようです。 旅行中ならではの、ふわふわした落ち着かない気分で、いつもと違う行動をとってしまうような…そんなのをうまく描いてると思います。 金原ひとみさんのファンなので、母になった事による変化、という意味でも楽しめました。 今までの作品との違って、あまりキツい描写はなく、アングラっぽいのやエログロっぽいのがダメな人でも楽しめるかな。 今までは、あまり人に勧める事もなくひっそりと読んでいましたが…(笑 これを機会にいろんな人に読んでもらえるといいなあと思います。
上下巻で読んだ時のレビューをそのまま転載します。長くなりますが・・・ご容赦ください
(上巻)
たった今上巻を読み終えたばかりで、興奮のままにレビューを作成しています。
『村上龍氏の才能は、あまりにも凄過ぎた。』
読んでいる最中から、ずっと同じ言葉が回っていました。「限りなく透明に近いブルー」を読んだとき、選考委員からセックスや麻薬といった俗物を扱っていること、加えて内容の不気味さ、それにもかかわらず不思議と美しい文章、という言葉を疑問しました。正直、これが…?と思ったのです。
以来氏の作品を敬遠していたのですが、本作でなるほど恐ろしい才能だと思いました。
内容は説明の通りですが、その精確な筆致、不気味で目を背けたくなるような場面を不思議と読ませるすがすがしい文体、デティールまで行き届いた設定、予想を裏切るプロット、壮大な想像力…など、挙げればきりがありません。
世の終焉・暗部をこれでもかというまでに読者の眼前に叩きつける、なのに「怖かっただろう?気持ち悪かっただろう?」とこちらにそっと手を差し伸べてくれるような優しさも感じられるのです。
…と、あれこれ書きましたが、本作の前には、私のような者の言葉の到達距離はあまりに短いと感じられたため、レビューはここまでにしておきます。
私もまだすべてを読み終わったわけではなく、今から下巻を読みますが、今の内からお勧めしておきます。未読の方、是非読んでください。
(下巻)
つい先日読み終えたのでレビューを書きます。
上巻の疾走感のままに、下巻も一気に読みました。相変わらず不気味な内容を描くのになぜか澄んだその文体には、目を背けたいと思わされるのではなく、作品世界にどっぷり引き込まされます。
下巻では主人公たち三人(ニヴァは…?と思われますが、作中でのハシとのやり取りでなんとなく異質な印象を抱きました)が崩壊していく様が見られます。コインロッカーに捨てられた子供、言葉に集約してしまえばたったこれだけのことですが、それが決定的に少年たちの生を腐食していくその様です。ラストまでほとんど救いがありません。
では村上龍は圧倒的な絶望だけを書きたかったのか?解説で三浦氏は、閉鎖と破壊について書かれた物語だ、と言っていましたが、私にはそれだけだとは思われません。それは物語の一番最後によく表れていると思います。崩壊していくハシは、最後の最後に一点の光、ある気付きを得ます。
(余談ですが、平野啓一郎氏の決壊、ドストエフスキーの罪と罰など、私的に傑作だと思う小説はほとんどラスト一行で読者をぶん殴るか、あるいは抱きしめるかして壮絶なカタルシスをくれると思います)
その気づきがなんなのか、明らかになることはありませんし、ハシ自身も、村上龍氏がハシにどうなってほしいのかや、どうあるはずだろうか考え、願う気持ちには気づいていないでしょう。
しかし私は、きっと村上龍氏は『圧倒的な困難だけが絶望に打ち勝つことができるのだ』というメッセージを発したいのではないかと思いました。だからハシは、幾度、あらゆる状況で負けそうになっても、あるいは負けたとしても、人生に、自分に、社会に負けることはなかったのだと思います。
山田詠美氏との対談で、『メッセージはすべて、死んじゃだめだ、だから、全ての小説は』と言った村上龍氏は、普段は毒を吐いても最後は皆を抱きしめてくれる、そんな両腕を持った人なのだと思います。
(以上)
新装版は読んでいないのですが、作品の価値は色あせず、むしろ一層光り輝くように思われます。一見絶望に満ちたこの小説は、実は慈愛に満ちた小説なのではないか。きれいごとを言うにはあまりにも世知辛い昨今だからこそ、こういう小説が今読まれるといいのではないかと思います。
文芸春秋に綿矢りささんとともに掲載されていたのを読んで原作を知っていましたがこの作品を映像化するのはいろんな意味で難しいと思っていました。
19歳の女性ルイが、顔中にピアス・背中に龍の刺青があるアマという青年と付き合いだしてから、自分もアマの紹介で出会った彫り師・シバに刺青を彫ってもらうようになる。ルイはアマと同居する一方で、シバとも関係を持ち奇妙な三角関係が始まる、といった感じでストーリーが進んでいきます。 それと同時に、二人の男が女を奪い合って片方が死ぬ、そして片方がプロポーズしてくるという内容です。かなりアングラ要素が強く一般向けに公開されたとは思えないほどです。
ストーリーを楽しむというより、この不思議な人たちの奇妙な生き方を楽しむ映画なのかもしれない。主演の吉高由里子の大胆な演技は見所だが、人によっては不快感を覚えるかもしれないと思います。はっきりいってまともな大人(とくに女性)にはあまりすすめられない映画です。
吉高由里子が有名になる前に出ていたというのがまだせめてもの見どころかも知れません。そういえば最近はかつての宮沢りえや菅野美穂みたいに若いのに急にヘア・ヌードに
なるといったタレントはなかなかありませんよね。この映画は吉高由里子のヘア・ヌードは
ないのですがかなり大胆な濡れ場を演じています。やってる事はAV女優と大して変わらない汚れ役で、洋画で例えるならアンジェリーナ・ジョリーの濡れ場が凄すぎるポワゾンみたいな吉高由里子の濡れ場のシーンのほうが印象が強い映画です。こんなのが芥川賞受賞作品だなんて信じられない内容で完全に有害図書指定といわれても仕方ないですが…
舌ピアス(リアルだけど実際はCG)、刺青、二股、SEX、殺人、SM、などタブーとされる内容を詰め込んでアングラの世界を描こうとしているがいかにも女作家らしい悲劇のヒロイン願望もラストにはしっかり織り交ぜられていました
ルイは後半ほとんど泣いてばかりで、精神的な幼さ、恋人への依存、解決能力が無い、など全体的に登場人物の言動が幼稚で精神年齢が低く見えました。
あとあびる優も友達役で出てきますが振る舞いが妙にリアルでした。最近の若手だったら
吉高由里子か土屋アンナくらいしかできないアングラな映画だろうなとは思います。
吉高の甘ったるい気の抜けた喋り方はまたバラエティなどで垣間見れる彼女とは違う感じです。個人的にはSMシーンがきつかったかな 暴力シーンは全体的に男性陣が力み過ぎ。
吉高由里子の濡れ場は凄いですが私はあまりお薦めしたい映画とは思えなかったです。
2007年文化庁メディア芸術祭の優秀賞受賞を始め、国際アニメグランプリを獲得した作品です。カフカなので話の内容は哲学的です。でも、独特で、デフォルメを多用した、時間感覚が麻痺するような、どこにもない絵作りは素晴らしい。“濃くてアクが強い”ので何度も繰り返して観たいとは思いませんが、長く手元に置いておくコレクション作品としての価値は十分にあります。山村さんの作品は世界規模で絶賛され、初期作品の『頭山』を含めて国際4大アニメ祭グランプリすべてを受賞していることからも、その描かれている世界感は比類なき出来栄えです。
共感できた登場人物は1人もいなかった。感動する場面など無かった。特に面白いストーリーでもなかった。身体改造などに興味があるわけではないので、本書に書かれていることがどれだけ正しいのかは分からない。 しかし、そんなことはどうでもいいことだ。本書の魅力は文体にあると思う。本書には何箇所か過激な描写があるが、なまなましさはない。突き放したような感じで書かれている。何事にもさほど夢中になれず、自分に関することなのに興味を持てず、自分のことなのに何が起こっているかうまく分からない。そういった感覚をともなった本書の描写は、ある意味、とてつもなくリアルでさえある。
|