一見幸福な風景が静かに蝕まれていく。 見てみぬふりをする、あえてさける、くさいものにはふたをするのが大好きな日本人 多くの若者が絶望する現実を、真実をあえて語ろうとしない。 政治的・社会的問題を解決しないままなし崩しにしていく。 そこにこそ自分たちの鬱の根源がある。 あいまいすぎるのもいいかげんにしろ。 僕は行き場のない日本の闇の中で、「愛」の糸口を探したかったのです。 ー 奥秀太郎
まさに、なさそうで実際にあるお話。 舞台は、数年前に原子力発電所の臨海事故が原因で、放射能汚染が進む茨城県筑波の小さな町。 渡辺一志演じる主人公・祐一郎は、ギャンブルによる多額の借金返済のため、ヤクザの元でドラッグの売買に手を染めるは、恋人は利用するだけして妊娠させ放置するは、いわゆるダメ男なのだが、 本当は純粋な映画青年であり、親からの期待を背負い、そんなプレッシャーに切羽詰まり、ブラックな世界に足を浸からせる気持ちは共感できなくない。 ラストのシーンでは、人間の弱さや脆さがうまく描かれ、泣きそうになった。そしてそこに小さな愛が感じられた。
生きていれば確実に私たちの身体を蝕んている目には見えない放射線。その放射線の様にきっとこの世界は私たちが今目に見えている事柄だけが全てではない。
本作は2011年3月11日の東日本大震災前に撮られた作品であるが、作中に出てくる桜はダークなお話とは裏腹にとても美しく、そのギャップと、 異常気象により春なのに雪を積もらせた桜の混沌としたその様が、まさに今の日本そのものを表しているかのようだ。 これからを生きる若者に是非見て欲しい映画である。 レビューには書ききれなかったが、それぞれの登場人物を通し、監督の想いがメタファーにある。 だが、これは社会的なメッセージ性の強さを全面的に出している訳ではなくエンターテイメントに作られているので、観やすく楽しめる。
キャストも桃井かおり、峯田和伸、大杉漣などなど、錚々たる豪華演技派俳優陣なので、注目です!!
知らないは怖い、むしろ私たちは知らなければいけない。義務というよりは使命感を感じさせてくれる作品でした。
野田秀樹が近年特に着目する「暴力」についての3作品。
日常の中で我々は加害者と被害者の双方であると気付かせる手腕は見事です。
但し、多少の悪寒を覚悟して読んで下さい。
本書には戯曲とともに、多数の写真が収められていて、それを眺めていると、
あの美しくも残酷な舞台の思い出に浸ることができる。
また巻末に、萩尾望都のエッセイと、萩尾・野田の対談が掲載されているのもうれしい。
この二人の共同作品が、どのような過程を経て創り出されていったのか、その様子を
楽しむことができる。萩尾が『1/2(マリア)+1/2(シュラ)=2/4(ふたご)』という方程式を提出し、
野田がそれを自由奔放に膨らませ展開してゆく。コラボレーションというものの醍醐味を
少しだけ味わった気にさせてくれる。
自分自身が生きるために最愛の人を犠牲にしなければならない、という主題は、
野田秀樹の作品にしばしば登場する。たとえば、高校三年の文化祭で上演したという
「ひかりごけ」(野田秀樹 (日本の演劇人)所収。またユリイカ (第33巻第7号6月臨時増刊号) 野田秀樹
所収の宮城聰エッセイ参照)、夢の遊眠社の初期作品である二万七千光年の旅。 そして「半神」。
そういう読み方を楽しんでみた。
近藤良平の「近藤良平という生き方」を読了。ダンスカンパニー「コンドルス」を主催する著者のインタビュー集。これまでの彼の人生から現在のダンスに関することまでが克明に書かれている。その時代時代の彼の回りにいた人々へのインタビューも行い、彼の人生を浮き彫りにしている。
1968年生まれの彼は私の1つ上。彼は生まれて直ぐ、南米に行き、小学校高学年に戻ってきたとのこです。出身中学校は練馬区の石神井。私も小学校卒業まで石神井在住。大学は同じ大学同じ学部でした。同じ時代に同じ空気を吸っていた人物がどんな気持ちでいたのかに非常に興味を持っていた。当然、サラリーマン体操での彼に興味を持ったこともありますが。その考え方に触れることが出来たことだけで有益な書であることは確かであった。でも一番感動したのは、彼の気持ちの持ちようです。気持ちがあれば人生が切り開けるのである。彼の気持ちの持ちようが周りの人々を感動させるのであろう。そんな「いい男」の物語。
ちなみに小学校時代の私の入っていた野球チームは「石神井コンドルス」。そのことも興味を持った一つです。
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