城の選択、写真、解説記事、レイアウトなどは非常に良いと思う。
ただ、ルビ(読み仮名)の振り方が素人丸出しで、見苦しいとか情けないとかいう以前に、
見づらくて仕方が無い。
担当者の無知とか手抜きとか、いろいろと事情はあるのだろうが、こんな雑な仕事を
する職場は許しがたいというか、すごく羨ましいというか、なんだか複雑な気分になる。
一番目立つ見出しや城の名前のルビがこの有様では、内容もあまり鵜呑みに
できないかもしれない、などと思ってしまう。
素人がワードで編集しているわけでもないだろうに、基本中の基本すらできていない
文字組みというのは、商業出版物としてはダメすぎる。誰もチェックできる者が居ない
というのであれば、出版社の「格」を問われる由々しき事態だと言わざるを得ない。
内容的にはなかなか良さそうで、本当はかなり欲しかったのだが、どうしても
美意識が耐えられずに購入を見送ってしまった。
篠山藩主の息女うつぼ姫。若さまをして「あの女に惚れなければ男じゃねえよ」とまで言わしめた稀世の美女。藩主の信任厚い医師江川了巴は、不老長寿の秘法を求め、姫を人魚のすむという南海の孤島に連れてゆく計画をたて、道中警護のため、剣客小森新太郎を雇います。
本編は、捕物帖というより伝奇ロマンと言ってよいでしょう。姫のあまりの美しさに魅入られた男どもが、姫をわが物にしようと、あの手この手の策略を弄します。物語は、剣はめっぽう強いが世事にはうとい新太郎を中心に展開しますが、要所要所で若さまがどこからともなくあらわれ、姫の危難を救います。姫はいつしか若さまに恋心をいだきますが、若さまは、「君子危うきに近寄らず」とばかりに素知らぬ顔。とんだ野暮天ですが、若さまはおいと坊のお酌でちびりちびりきこしめしてるほうが性に合うと見えます。
本巻は、中編「まんじ笠」ほか短編7編を収録。目玉は「まんじ笠」。大目付遠山隼人正の腹違いの妹八重が知行地の屋敷から失踪しました。与力佐々島俊蔵から捜索を頼まれた若さまはぶらりと屋敷を訪れますが、草深い屋敷に隠居中の生母おいしは、なぜか若さまを追い返します。おりしも遠山の知行地では、土地の顔役雁木の四郎兵衛と遠山家出入りの小虎の三吉が喧嘩支度の真っ最中。若さまは、十手取縄を預かる雁木親分に、娘の探索と喧嘩の中止を申し渡しますが、隼人正に怨みのある親分は、けんもほろろの応対。あまつさえ、若さまを叩っ斬れと用心棒に命じる始末。若さまの腕と知略が冴えわたる一編です。
本巻は、「まぼろし力弥」ほか8編。遠州屋小吉が若さまのお知恵拝借に持ち込んだ話とは、同じ晩に、一人の男が、違った場所で、それぞれ違った女と、相対死したという奇妙きてれつな事件。おまけに現場には溜まるほどの血が流れていたのに、心中した男の死体が消えました。心中の男は尾上力弥なる女形。女は一人が深川の芸者お八重、あと一人は質屋の娘おつゆ。おつゆは蘇生して遠縁の旗本屋敷に預けられますが、力弥と心中するとの書置きを残して屋敷を抜け出し、死体で発見されます。若さまは、初めの心中現場に関係者を集め、複雑怪奇な事件の全貌を解き明かします。若さまの推理が冴える一編です。
|