70年発表の2nd。チャプター'V としてのラスト作。前作の5人に加えて新たにデイヴ・ブルックス (sax)、クライヴ・スティーヴンス(sax)、ソニー・コバット(tp)、デヴィッド・コックスヒル (sax)、ブライアン・ハグ(g、vo) ら5人が加わって10人という大編成となっている。マンフレッド・マン時代にも短期間ながらヘンリー・ロウザーらなどの管楽器奏者をメンバーに加えていた時期(前作でもゲストとしてブラス隊は参加している)があったものの、今回は本格的なブラス・ロックの編成となっており、かつての音楽性を拡大発展させると同時にこの時代に起こったブラス・ロックのブーム(シカゴやBS&T、英国ならIFなど)に呼応したものだと思われる。
1.はモロにボブ・ディラン・スタイルのヴォーカルを聞かせるブルース・ロックだが、ヴォーカルの後の重厚なブラスとの対比が非常におもしろい。渋目の曲ではあるが、このグループの特質を活かしたなかなかの佳曲だと思う。鋭いブラスのアンサンブルは他のブラス・ロック系のサウンドとは一線を画している。2.はトラッドの風味も感じさせるフォーク・ロック。印象的なメロディを聞かせる味わい深い曲である。14分超えの大作6.は完全なジャズ・ロック。管楽器のみならず無機質なオルガン・ソロも聞き物。7.はいわゆるポップ・チューンだが、歪ませたオルガンのソロも魅力。
フリー・ジャズ的な要素も強くジャズ・ロック的な部分を含めた雑多な音楽性を見せるが、そういった個性を含めてブラス・ロックを聞く上では絶対外せない作品の一つだと思う。
リーダーのマンフレッドは本作発表後、グループを解散/メンバーの一新を計ってマンフレッド・マン・アース・バンドを結成する。
マンフレッド・マンの歴史中,そして初期ヴァーティゴ・レーベルから出た作品中でも特筆すべき完成度の名盤です.よくジャズ・ロックと言われる作品ですが,ソロイストのアドリブよりも全体のアンサンブルやヴォーカルを重視した点で,BS&Tあたりに近いブラス入りロックだと思います.サウンドの鍵を握るのはキーボード兼ヴォーカルのマイク・ハグ,そして蛇が這うようにうねりまくるベースを弾くスティーヴ・ヨークの二人でしょう.実際この二人が参加していなかったら全く違う音楽になっていたと思う程,この二人は素晴らしい演奏を聴かせてくれます.重苦しく暗い典型的ヴァーティゴ・サウンドですが,発表から30年以上を経た今聴いても全く古くさくないのは凄いです.
69年発表の1st。マンフレッド・マン(グループ名)のマイク・ハグ(p、vo)、マンフレッド・マン(org) が、同グループの別ユニットとも言える Emanon を発展させる形で結成したグループの1作目(ポール・ジョーンズ時代がチャプタ−1、マイク・ダボ時代がチャプター2とのことらしい)。2人の他、バーニー・リヴィング(fl)、スティーヴ・ヨーク(b、g、harp)、クレイグ・コリンジ(dr) が加わった5人組である。
1.は楽曲にブルース、R&B的な要素も感じられるもののアレンジはいわゆるプログレ的な雰囲気が濃厚。すでにマンフレッド時代とは異質の音楽性を開花させている。ブラスが登場する部分ではビッグ・バンド的な雰囲気も表れるが、ノイジーなサックス・ソロに至っては同時期のクリムゾンに非常に近い質感を生み出している。プログレとビッグ・バンド・ジャズの邂逅といった感じだろうか?2.もR&Bベースのメロディアスな曲で要所にブラスが登場するが、マンフレッド時代の面影はない。オルガン・ソロもプログレ色が強く時代性を考えればかなり先端を行っていたことが良く分かる。ベース・ソロも聞き物。3.はプログレ的なリズム隊に前時代そのままのブラスが乗ったイントロの後、ノイジーなオルガンが登場する。 いわゆるアート・ロック的な曲と言えると思うが、サックスのソロが叫びを上げる部分では初期クリムゾンを思わせるなどアレンジ面での面白さが際立っている。あくまでもブラスのアンサンブルが古臭くて美しいというのがこの曲の胆だと思う。
ポップ寄りのヴォーカルが重厚かつテクニカルな演奏にやや不釣り合いな気もしないではないが、前グループからの接点という意味で考えれば別の意味で楽しめると思う。マンフレッド・マン時代を完全に払拭しているのがとにかく凄い。
ちなみに1.はマンフレッド・マン時代の末期シングル曲「A B-Side」の新録バージョンである。
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