葛西の小説のどれもこれもが、小説家でありながら小説が書けないジレンマとの葛藤を強いられてできた作品なので、ある種の何か異様な感じがする。 絶筆は、これ狂気の世界の一歩手前のことであろう。どうも精神的に普通でない人が、普通の文章を書くための苦労であろう。 レビューもなにもこの葛西の作品は受け付けない、批評のしようのないある哀愁感がある。 特異な小説だが、一読の価値はある。個人的には評価しないが、特異性での評価である。
葛西の小説よりも伝記のほうが、人生のほうがよほど面白い。しかし、この作者は、冷静に葛西文学を分析して、大いなる視点を提供している。 純文学を葛西の本質としたところに、大正期の純文学は、私小説そのものであるとい常識を思い出させてくれた。大正期の文壇のなかの葛西の位置が よくわかる。
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