ドリトル先生シリーズの第一作。
動物と会話できる医師、ジョン・ドリトル一行の冒険談です。
途方もないほら吹き話であって、未開の地アフリカをめぐるエキゾティズムに満ちています。全編に渡ってユーモアが満ちているので、一歩間違えると殺伐した展開になりそうなストーリーが、常に笑いながら読むことの出来る線に収まっています。
子供の想像力を刺激して、「ほら、動物も友達になれるんだ」というメッセージを与えてくれると思います。
小学校の中学年から、楽しくお読みいただけると思います。
子供の頃、読まずに過ぎてしまった「名作」を、大人になってから読むと、やり残した宿題を仕上げたような気分になる。『ドリトル先生航海記』(ヒュー・ロフティング著、井伏鱒二訳、岩波少年文庫)でも、このような達成感を味わうことができたが、その上に、いくつかの発見があったのである。
先ず、主人公の医師・博物学者のジョン・ドリトル先生が大変な動物好きで、哺乳類、鳥類、魚類などの言葉を解し、彼らと会話を交わせるということ。私のような生き物好きにとっては最高の夢を実現しているのだ。
そして、ドリトル先生は小柄でかなり太った人物として描かれていること。人間は見た目でなく、その中身――勉強家、研究熱心、冒険心旺盛、人にも生き物にも優しい心の持ち主――が大切だと、読者に伝えているのだ。
ドリトル先生の口を借りて、ダーウィンやキュヴィエに、「いま人のうわさにうるさい、あの若いチャールズ・ダーウィンという男は、ケンブリッジ大学の卒業生で、読み書きにひいでておる。それから、キュヴィエーは先生をしておった」と言及しているのも興味深い。
また、ユニークな挿絵が私たちの想像力を掻き立ててくれること。
さらに、訳者が、『山椒魚』といった短編小説や、「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」という漢詩の大胆な訳で知られる井伏鱒二という大物であること。
ドリトル先生物語の12冊に上るシリーズは、ロフティングが自分の子供たちに向けて書いた童話ということだが、こんな父親を持てたら、どんなに楽しいことだろう。
この映画は原作者井伏鱒二の『声高であってはならない』なる精神が今村昌平監督に生かされて映像化されており、核が引き起こしたひとつの悲惨さを抜き出し、それが日本人特有の行動様式に起因した事を静かに訴えています。放射線被爆者への風評で婚期を逸したばかりでは無く、人生そのものが狂って行く人と周囲の人達との無念さが現代へ投射され、核のトラウマが連鎖して今の福島第一原発による放射線被爆風評被害に静かに警鐘を鳴らす結果となりました。21世紀になっても発展途上に有る我が国の放射線被爆医療や、放射線被曝者への日本人の偏見と風評被害の苦難に対し、終戦後に原爆症で亡くなった人々が息をひそめて『あぁやっぱりこうなるのか・・・。』と嘆きながら凝視している様な気さえします。亡くなった田中好子さんの演技も細かい表情などからよく表現しており、他の俳優さん達の演技も素晴らしく、今村昌平監督渾身の作です。
マリン・オールソップ指揮 ボーンマス交響楽団 イギリス、プーレ、ライ
トハウス・コンサートホール 2005年1月録音。
1958年の「ソリチュード・ソノール」から1994年「精霊の庭」まで5曲収録。
武満の多彩な作曲歴を垣間見ることができる。
「鳥は星形の庭に降りる」は小澤のCDがあるがどうもいま一つ明確でな
かった。かなり前になるが岩城宏之の実演を聞いたとき、この曲の美しさに
打ちのめされた記憶がある。オールソップはそれを思いおこさせてくれる。
アルバムの中では「精霊の庭」が圧巻。晩年の曲だけにより精緻に
見事に音が響きあう。まさしく武満トーン。2年後武満は帰らぬ人となった。
今生きていればどんな「音」を我々に聞かせてくれているのだろう。
1958年作品。森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺の3人を主人公にしてたくさん作られた「駅前シリーズ」映画の最初の作品。ただし、井伏鱒二原作のこの作品の成功にあやかって次々と新作が撮られたらしいのですが、監督はいろいろです。
感想:面白い! 喜劇なんで「人生を変えるような感動がある」というのではないけど、自分の親かそれより上の世代の人たちの輝き、活気づいてきた頃の東京…今よりちょっと荒っぽくて元気があふれている、そういうものを見て感じられるだけでも見る価値があります。
中心となる3人のすばらしい俳優さんに、大勢の登場人物がにぎやかにからみます。舞台が旅館で、団体客がざくざくやってくるので、画面に20〜30人映っていることも多く、そういう団体客とか通りすがりの酔客なんかが非常に生き生きと叫び、走り、踊りまわっていて、まるでミュージカルのようです。
それにしてもこの3人、森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺、すごいですね。こんなに才能豊かな俳優さんが今いるでしょうか?…特に森繁久彌が素晴らしいです。実は私、名前を見るまでこれが森繁だと気づきませんでした。同じ頃の「社長シリーズ」に出てるのはすぐにわかるんだけど、私の中に彼は貫録があってエラソウな人だと刷り込まれているらしく、旅館の番頭さんになっている姿は想像できなかったようです。
ところで、この予告編が最高です。テンポもいいしキャッチコピーもいいし、冒頭で3人+淡島千景+淡路恵子が小料理屋のカウンターに並んで台本の読み合わせをやっているのもすごくセンスが良いです。
こんな時代の映画なのに、ゲイの客引きが出てきたり、会話の中にホモセクシュアルのことが出てきたりするのが「?」と思っていたら、wikipediaによると(真実ではない可能性もありますが)監督がゲイだったとあります。だから女性の描き方がちょっと辛辣で、全体的にこんなにセンスがいいのかなぁ(←偏見かもですね、すみません)
やっぱり誰かが薦めてくれた映画のほうが面白いなぁ…。しみじみ。
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