六弦心 Vol.1
山本恭司さんの《弾き語り弾きまくりギター三昧》へ行った時、このアルバムについて触れられていたので、
予約して以後も、一体どんなアルバムなのだろうと、心待ちにしていた。
ギタリストたちが、それぞれのアプローチ(演奏・アレンジ)で、お馴染みの日本の曲を披露している。
懐かしいような、曲によっては別のものに生まれ変わったような… 不思議な感慨に浸った。
このアルバムが発表されなかったら、この11曲に耳を傾けようとはしなかっただろう。
身近で、親しみやすいようでいて、忘れかけていた。
原曲の素晴らしさを損なうことなく、ドラマティックな展開を見せる山本恭司さんの「仰げば尊し」「君が代」と、
SHARAさんの「花」が、個人的には秀逸だと思った。
「仰げば尊し」の後半は、特に厳粛な気持ちになることができた。
質が、個人的嗜好にマッチしたといえば良いのだろうか。
他の作品も、味わい・聴き応えは、たっぷりだ。
有名すぎる原曲をどう扱うか、難しい点も多かったかと察するが、
これほどの多彩なギタリストの競演は、圧巻だ。
インフィニティ~波の上の甲虫~ [DVD]
原作:いとうせいこう『波の上の甲虫』 監督:高橋巌 脚本:高木弓芽
いとうせいこう氏の原作のテーマは、どれが「現実」でどれが「虚構」なのか分からなくなる恐怖、最後の一文による「現実」から滑り落ちてしまうのではないかという戦慄です。「メタフィクション」というジャンルばかりか、「小説」という媒体の特性の可能性を極限まで追求した傑作で、「映像化は不可能」と思われるだけに、やっぱり原作そのままというわけにもいかず、大胆にアレンジしていますが、恐ろしい原作より、幸福感で満たされる映画版の方が好きです。脚本担当の高木弓芽さんは長編デビュー作らしいですが、ちゃんと出来ているじゃないですか。
演技は、日本語も英語も台詞回しが全然巧くなくて、素のままに見える、要は俳優に求められているのは演技者としての演技力じゃなくて素材としての魅力なんだけれど、ボラカイ島やローレル島の神秘的な雰囲気によく合っています。
アン・ルイス トリヒ゛ュート・アルハ゛ム [ANNISM ~Ballads~]
アン・ルイス世代にとっては
懐かしさとともに
青春時代の甘くほろ苦い
ときめきを思い出させる。
アン・ルイスを知らない世代にとっては
こんなに感じる歌が
その時代にあったのかと
驚きとともに憧れを抱かせる。
'アン'イズムを受け継ぐ
実力派アーティスト達による
自然と心に響き拡がるサウンドは
聴けば聴くほど染み渡り
その世界感に酔いしれる。
カフェやバーで
恋人と二人で会話を楽しみながら聴くもよし、
一人で煙草の煙と戯れながら浸るもよし、
時間の流れを邪魔することなく
空気を癒すリリーの香りのように、
優しく心を包み込んでくれる、
そんなアルバムです。
昼下がり
青山の、少し奥に入った
オープンカフェで
ほんの少し濃いめのモカマタリと
オススメのスィーツを注文したら
山田詠美の短編小説をBGMに
ANNISMBalladsを
ティースプーンにして
ゆっくり心を溶かして下さい。