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天平のホープロンちゃんの衝撃研究所

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雪の断章 (創元推理文庫) この本を家の書棚で見付けたとき、私は確か12歳だった。まだまだ赤毛のアンに共感し、12歳にしてもオクテな側にいた私にとって、この本のシックな表紙とザラザラの紙に印刷された細かい字の数々が、何とも大人っぽく秘密めいて見えたものだ。

ブルジョワ家庭にもらわれ甲斐甲斐しく働く孤児の少女飛鳥は、雪の札幌大通り公園で一人の青年と偶然に出会う。何とも耽美的な筆に乗って、少女の成長と恋、会社組織の闇に絡んだ殺人事件、切ない別れと恋の成就、それらが粉雪の舞う札幌を舞台に幻想的に展開する。

そして、12歳にして私は「ベーゼ」という耳慣れない言葉がKissを意味することを知ったのである!このことに大興奮した私は、それ以来本作品を禁断の「官能本」として、大人に隠れながらこっそりと読み重ねることになった。少女の視点からみると、登場人物はまさにオトナの男と若く清楚な女であり、彼らが様々な苦しみを乗り越え恋愛を実らせていくさまは、じっさい何ともいえずロマンチックで官能的だった。

そういうわけで、本作は個人的に思春期を揺るがす重大な本であり、大人になって読み返してみる今、本作がよくできたA級通俗小説であると同時に、思慮深く優しい女性像と人間の感情の襞を丁寧に描いた文学でもあること、それゆえ、私にとっての「禁断の書」が他のどの本でもなくこの本であったということに、不思議な安らぎを感じている。

それにしても、この作品で賞をお取りになった佐々木丸美先生、今頃どうなさっているんでしょう?単行本の廃刊は残念です。
彼女の作品、もっともっと読みたかったです。


罪・万華鏡 (創元推理文庫) 一見どうということもない簡単に見える事件。被害者も加害者もはっきりしていて、証人もいる。ただ、加害者の様子が少しおかしい。念のためと警察から精神科医のもとへ送られ、精神鑑定を受ける加害者。医師はゆっくりと、しかし確実に加害者の心の奥に迫っていく。そこで見つけたものは、単純に見えた事件の裏側にある人間の残酷さ、事件の見方が一変するような犯行動機と複雑な人間の意識と悪意だった。
人間の恐さがじっくりと味わえる四つの短編がおさめられた、『罪シリーズ』の二作目。本書には予知や予言がでてきますが、それを超能力・超常現象のままで終わらせずに、科学的・心理学的解釈をつけて説明されているのもおもしろく読めました。

影の姉妹 (佐々木丸美コレクション14巻) 隠れ里に暮らす美しい双子の姉妹。そこに奉公にきた、ひとりの少女。ともに邇邇玉(ににぎ)というひとつの名前で呼ばれる姉妹の秘密に少女が気づいたとき、彼女もまた、不思議な遺伝子のたどる長い長い物語に組み込まれていく。それは、愛と罪にまみれた物語。愛あるが故に罪を犯し、去っていく者たちの物語。
隠れ里に住む者たちの揺るぎない愛情と、悲しい罪の意識が、詩的な美しさを持つ文章によって描かれており、その切なさに心を激しく揺さぶられました。 今まで読んだ佐々木丸美さんの作品の中では、私はこれが一番好きです。


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