トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ
昭和20年代に生まれた私の小学生時代は、毎朝、井戸水を汲み上げ、下校すれば、晩ご飯の素材や父親の晩酌の量り売りを数km先の市場に買いに走ったものである。夏の土日には借りている畑の雑草取りが子どもたちの仕事だった。それ以外は真っ暗になるまで野球をしたり、裏山の大木から垂れ下がる蔓でターザンごっこをして遊んだものだ。私の生まれ育った北海道と著者の描く沖縄地方という違いはあるが、著者の作品を読むと私の気分を子ども時代に運んでくれる。
小さい頃から私には確信のようなものがあった。それは「人を憶測で判断しなければ、相手の良さが必ず見えてくる」というものであり、それが人間同士を結びつける「やさしさ」だと気づいたのは大人になってからだ。中学一年の頃はどの教室にもアイヌの生徒が2〜3人いたが、外見が随分異なるため最初は無口であったが、親しく話すようになった頃には、アイヌ隔離政策でアイヌ居住地区の学校に転校していった。兄がやくざという同級生と仲良くなると、「あなたに何か困ったことがあれば、兄貴の仲間が助けに来るから」と言われた時には驚いたが、見かけと異なりやさしい奴だった。
就職して研究成果を事業化する時も、人間性を高めようと真言密教の在家修行に取り組んだ時も、身近にいて嫌な奴だと最初は思えたのに、そうした相手ほど、いつの間にか一番助けてくれる仲間になっていた。
そうした幾つもの「やさしさ」が著者の作品に溢れている。
Blue-中村佑介画集
中村氏の絵を知ったのは、森見登美彦の小説
「夜は短し歩けよ乙女」
の表紙絵が最初です。
書店で一目見た瞬間に吸い寄せられてしまい、思わず購入してしまったものでした。
この人の作品は本当に初見の引力が凄い。
この画集も書店で見つけて思わず買ってしまいました。
基本的には乙女画に含まれるジャンルの画集だと思いますが、
僕は画面全体を構成する幾何的な線の組み合わせと、
意外性がありつつ洗練された色彩のセンスに魅せられます。
また逆に、手書きの味とシュールな構図を強調した作品や、
モノトーンのインパクトを前面に出した作品にもそれぞれ惹かれるものがありました。
乙女画と言っても前面の人物だけでなく、
時にポップで時にシュールな全体の構図がとても面白い。
日本の乙女画と言えば真っ先に竹久夢二の名が浮かびますが、
氏の作品にもその面影が感じられるようです。
特に横顔のカットでの眼や唇の表情には、
夢二作品に通じる可愛らしさと艶っぽさが宿っています。
初見のインパクトに優れるものは逆に飽きも早いものですが、この作品はどうでしょう。
まだ結論を出すほどの時間が経っていませんが、
まだ暫くはちょいちょい引っ張り出して眺めてしまいそうです。
シャングリ・ラ DVDコレクターズエディション
まさかの単巻販売中止(6巻《前半12話分》まで発売)に見舞われて買うのを中断していましたが
これで一気に後半部分が全て揃えられるという事を考えた末に遅ればせながら購入してみました。
2話収録のこれ迄の単巻の価格で考えれば残り6巻分を1巻毎の価格として換算すれば
多少はマシに思えます。対象者はこれまでの単巻購入者を前提としているでしょうし‥。
ただ、全く同じ価格でもBlu-rayで全25話収録+未CD化音源を含むBGM集を特典に付けているBOX
【DARKER THAN BLACK-黒の契約者-】の様な商品もあるという事実があるので
そういった別の商品と比べるとやっぱり割高であり結構複雑なものがありますが…。
販売会社別による消費者に対する良心の差が明確に表れていますね。
内容は涼子を起点としたアトラスについての様々な謎や、AAAの3人の存在の意味や出生の経緯等
物語の本筋についは終盤で判明し盛り上がりますが、中盤はダラダラした展開が目立ちがちで
流れがアンバランスです。ダラダラしている部分を他の主要なキャラの掘り下げに使ったりして
キャラに厚みを持たせていたりしたら良かったのですが、そういった事には用いていないので
殆どのキャラの設定が薄く、必然的に繋がりも不自然さが際立ち作品がキレイに纏まっていない
と思います。ただでさえ複雑な要素でストーリーが構成されているのに‥‥。
しかし、OP映像を含め作画は惹き付けるモノがありますし、躍動感は出ているので作品の質自体は悪く
ないと思います。そういった所を評価している人ならば買ってみるのも悪くないかもしれません。
私自身は上記に挙げた様な様々な観点から複雑なものもありますが凄く損をしたとも感じないです。
全て揃えられたというコレクションの面でのスッキリ感と満足度が最も大きな要因でした。
テンペスト DVD BOX
若干、値段が高いように思うが、ドラマのデキとしては良い。
とくに仲間がよい(^^)v
仲間の男装は美しく、青筋立つ横顔が、理想の男性像で良い。
ストーリーも悪くない。
推測だが、シェイクスピアに確かテンペストがあった気がする。あるいは海外ものの原作があるが、それを沖縄の琉球王朝に置き換えたもの、あるいはそこにヒントを得て、男装の令嬢が王家の歴史を塗り替えたという設定にしたのではないだろうか?
別になんだって構わないが、とにかくこれで、いかに琉球人が賢く、仲間意識が強いかが理解できる。
今の沖縄問題が根深いことも理解できるだろう。
だからラストがいまいちしっくりこない。
勾玉とか巫女が出てきてしまうと、大和民族的になってしまうきがして、若干胡散臭いが、それでも、一人の自立した女性像としては、一見の価値あり。
シージーが少しちゃちなのは目をつぶりましょう(;^_^A
統ばる島
「統ばる島」遠く琉球王国以前の時代から脈々と継がれてきた島々での自然の営み。
著者は現在の沖縄の島々を内地の人々にも判り易く描写することに長けている
当代きっての作家だと思います。
中でも随所に出てくる島の要となる御嶽(こちらの世界では鎮守の森に相当?)に
対する信仰心の厚さに興味を覚えました。
人の営みも自然の流れの一部、その中の一瞬の営み・・・その一瞬をどこでどういう
ふうに生きるかを、あらためて考えさせられました。
「統ばる島」は、自然とかけ離れた都会に住んでいても忘れてはいけない事々が
数多く書かれた良書です。