残念ながら、全盛期のような声量はありません。立っているのもやっと、という状態ですので、歌へ全力投球できない歯がゆさもあったことでしょう。その直向な歌唱姿勢が、多くのファンに哀愁を感じさせ、等身大の身近な歌手として、共感を呼んだステージだったと思います。
戦後の混乱期を経て、日本人がどん底の生活から這いあがる心の拠り所に美空ひばりの歌があったことは間違いないと思っています。女性初の国民栄誉賞が彼女の死後与えられたことは、その功績にあったことでしょう。大衆の圧倒的な支持がなければ半世紀に渡る大歌手の地位は確保できないと思います。
激動の戦後昭和史と共に、復興の日本のさきがけとなって駆け足で走りぬけた人生でしたね。孤高の歌手として淋しい気持ちがお酒に向けられたのでしょうね。52歳という早すぎる人生でした。
「『不死鳥』でありたい」という歌に対する思いは、今もファンの心の中に焼き付いていますし、このDVDの中に生き続けています。この貴重な伝説の東京ドーム公演を、若い世代に是非見てもらいたいものです。