乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
本谷氏の文章は、勢いがあり、力強さにみなぎっていて、それは時に暴力的であるほど。がしっと、、胸ぐらをつかまれて引きずり出される、そんな感じ。
恐ろしくて、でも、たまらない。その臨場感に、つい舞台を想像してしまう。
小説の迫力、そして、読者の想像力に負けないために彼女がどんな演出をするのか、
俳優たちにどんな演技をさせるのか、この作品は舞台化したらすごいだろうなあ、とさきちは勝手に想像し興奮しながら読んだのでした。
本作品は、英則と奈々瀬の生活を描いたもの。それは、復讐を中心した、奇妙でグロテスクなものだった。英則に復讐されることを望み、自主的に監禁される奈々瀬。決して暴力を振われるわけでもなく、罵られるわけでもない。ただ、英則の命令に従い、
怯えながらご機嫌をとり、表情を隠すため、ダテ眼鏡をかけている。
一方、英則は保健所に勤めている。犬の処分、それが彼の仕事。足をひきずりながら。
そしてある日、英則は天井に、屋根裏に続く“穴”を見つける。
二人に通じるルールは、「お互いの身体に触れない」
それで、どうやって復讐を成しえるのか?
そもそも、その復讐とは、いったい何なのか?
謎めいた二人の関係と、少しずつ明らかにされていく彼らの中心にある「復讐」。
ただ、殴る蹴るといった身体的な損傷だけが暴力ではない。悪気がなくとも
知らぬ間に相手を傷つけていることも、現実世界では往々にしてあるのだ。
そこに、家族とか、愛情とか絡んでくるから、余計ややこしくなるのだ。
そんな、奇妙な読後感を味わいます。ぞくぞくしました。流石、本谷氏だなあ、と感心しながら。短い作品なので手軽に読めます。ただ、奥は深いです。
博物誌 (新潮文庫)
ロートレックの美しい挿絵とジュールルナールの簡潔で私的な文章で身近にいる動植物の世界へ誘ってくれます。学術的な本と言うより詩集のような感じです。私は、長い間トイレの中にこの本を置いていました。エスプリの効いた素晴らしい世界、、、を楽しめました。是非、お母さん、子供に読ませてください。