3・11の未来――日本・SF・創造力
3・11から半年経って発行されたことにすら意味を感じてしまった。いろんな方の論考に触れることができて、日本のSFというものの再考を読むことができる。現場にある悲しみやつらさなどとは距離があると感じてしまうが、その距離感がSFからみた3・11なのかもしれない。「小松左京、最後のメッセージ」と謳われていたが、もっと大きな使命が刻まれていると読むことができると思いました。
歴史から消された邪馬台国の謎 (プレイブックス・インテリジェンス)
倭人がもともと朝鮮半島に本拠を持ち、北九州はその橋頭堡にすぎなかったことが、第一次資料である魏志の記述から説得力をもって説かれている。卑弥呼のちょっと前の時代、倭人は日本人でも朝鮮人でもなかったのだ。卑弥呼の時代までには、本拠が日本列島に移っているという。そして、そろそろ結論がほしい邪馬台国論争だが、九州以外には考えられないという結論を導いている。手軽に読める新書だが、日本人のルーツについてしっかりとした読み応えを感じさせてくれた。この値段は安すぎる。
日本の原発技術が世界を変える(祥伝社新書225)
福島第一原発の事故の後では皮肉なタイトル(別の意味で「世界を変え」た)となってしまった。地震・津波と原発との関係については何ら触れられていない。むしろ、ドイツで冷却水をライン川に流したところ、水温が上がってしまい、下流のオランダ流域での希少種の魚が絶滅しかかったことを取り上げた上で、「日本の原発の場合、冷却水を流す先は広い海だから、こういった問題は生じない」(56頁)とし、原発が海辺にあるメリットを指摘している。一方、各国の原発事情を紹介した部分は参考となる。中国・韓国の動きに要注意だ。
世界史の中の石見銀山(祥伝社新書202) (祥伝社新書 202)
かつて日本は銅に始まり鉄・金そして銀といずれも世界有数の産出国であった。その中でも島根県は、出雲荒神谷遺跡(銅剣・矛)同加茂岩倉遺跡(銅鐸)、それに続く砂鉄(タタラ)で有名だが、それに石見の国の銀が加わったのである。
その石見銀山がユネスコの世界遺産(文化遺産 2007.07))への正式登録が決まり、日本中が(喜ぶと言うよりむしろ)驚いたことは記憶に新しい。選ばれた理由として、環境保全(森林資源)が特に評価されている」というのだが、それでは根拠が稀薄すぎる。
著者は──あくまで仮説だと断りながらも──膨大な資料を駆使し、世界史的な視点において、大きく、
1.当時明朝への朝貢貿易に名を借りた「勘合船」の活動
2.同銀山の開発と精錬にかかわった豪商たち、そしての存在、
3.西欧列強に呉して活躍した御朱印船を含む貿易船の活躍
3.そして短かったが当時の日本と非常に深かったポルトガルとの関係
の3つを挙げる。すなわち「世界史の一面を飾る、大航海時代における日本の銀の役割、そしてその中での石見銀山という存在と比重」を考えなければならないと指摘している。
詳しく紹介できないのは遺憾だが、読み物としても愉しい同著の必読をお奨めする。