銀行 男たちのサバイバル (文春文庫)
自ら銀行の幹部まで上り詰める一方、作家として多くの小説、とくに経済小説を送り出してきた山田智彦の、最高傑作。のみならず、日本の企業小説のなかでも最高峰の作品である。
90年代以降、破綻と合併の中で、日本のメガバンクは3大グループにまとまってきた。おそらくこの小説はその一断面を素材にとったものであろう。
巨大銀行の働き盛りの行員で、互いに親友同士という数人の男たちを中心に話は進んでいく。そこに持ち上がる合併の話。同期の友人たちは、各々合併賛成・反対の幹部たちに重用されることになり、友情と立場との間で微妙な位置関係になっていく・・・。彼ら出世競争もからんでくる。
そんな人間関係を描きながら、しかし昼ドラ風に暗くならず、さわやかな後味がのこる物語である。このような筆力を持った人はそうはいないだろう。
のちにNHKでもドラマ化され、好評を博した。
追跡!平成日本タブー大全〈2〉 (宝島社文庫)
素人ながらにも、このタイミングで報道されるこの事件って・・・別の事件から目を奪う、踊動作戦なのでは・・・?と思える事件もままあります(特に官僚関係の事件)。また被害者や原告のバックポーンが、怪しげな運動団体である云々の噂も飛び交いますが、そんな本質をビッシッと突くメディアがないため、我々一般人は、嘘の情報に踊らされたり、裏読みしなければならず、その辺の「ホントはどうなってんの?」を解説してしているのが本書です。
この中のタブーとは、創価学会 記者クラブ 電通 オリエンタルランド ライブドア 国策捜査 年次改革要望書 シャニーズ アントニオ猪木 飛田新地 えな業者 中古車販売 市民団体 知的障害者の犯罪 についてのレポートとなっています。
各章とも、書き手が、名出しで執筆しており、イニシャルトークのような、ぼやかしも極力無くし、裏側からのレポートとして、満足できる内容だと思います。
民間個人が、権力を持つって傍若無人に振舞うのは、まあ許せたとしても、特殊法人等の税金の使い道・使い方については、最低でもアンタッチャブルにならないようなメディア報道であってほしいと思います。会社四季報の立法・行政・司法版みたいなものが、選挙時の参考書としてあるべきだと、かねてから思っています。
社会学になにができるか
実は、臨床心理学をずっとやってきた私が社会学に出会った最初の著書がこれなのですが、本著は最前線で活躍する社会学者が夫々のテーマをわかりやすく解説した社会学の入門書です。
日常会話やわたし達が無意識のうちに何気なく行っている儀礼的行為、性の常識、歴史の常識などなど・・・様々な「あたりまえ」を構築主義の紹介と共に問い直してくれます。
読み終えた後、周りを見る目が変わった快感が忘れられません。
目の前の世界をチョット変えてみたいアナタへ、オススメの一冊。
政治的なるものの再興
政治倫理とでもいうものを、如何に現代社会に形成するかを思い描いている。
ただし、理想と現実を繋ぎ合わせようと苦心するあまりに、構成された権力体勢と、新規または対抗勢力との闘争形態が曖昧模糊となってしまっている。