マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット(紙ジャケット仕様)
所謂、「第一期クインテット」の最初のアルバム。今となっては恥ずかしい話だが、ジョン・ゾーンや大友良英からの先祖帰りでジャズを聴き出した僕は、ハード・バップ時代のマイルスの音は当初、古臭く感じていた。そんな先入観と印象を取っ払ってくれたのが、このアルバムである。ジャケットのほのぼの感と立ち上がり二曲のスローなリズムが非常にマッチしていて、マイルスのミュートも良い音で歌っている。
賛否両論のコルトレーンのサックスは確かにブホーっとデカイ(笑)。マイルスのミュート・トランペットと比較すると、音の表情が一本調子なのは否めない。一方、ガーランド(p)、チェンバース(b)、フィリー・ジョーンズ(d)はバックに徹しつつ、テクニックも存分に味わえる素晴らしいコンビネーションを醸し出している。特に、もっとピアノをクリアな音で聴けたら更に名盤になったんだと思うけど、これはもう録音技術という時代制約の問題でしょうね。(ガーランドのピアノは元ボクサーとは思えない細やかさです。)
いや、50年前のアルバムだからそりゃ決して新しい驚きはないんだけど、何しろ演奏がしっかりしてるので、シンプルなアルバムだけど落ち着いて味わえます。星が1つ欠けてる理由は、確かに上手いアルバムだけど、その後のマイルスのアルバムに時折あったような、JAZZの方法論と世界観をガラっと更新しちゃうようなアルバムではないからで、単に相対評価の結果です。