則天武后と玄宗皇帝 (PHP文庫)
唐の高宗の皇后である則天武后とその子孫たちの物語。唐の女禍の時代について、さまざまな人の利害を絡ませながらうまく描いたと思う。とりわけ、中宗や睿宗のようなマザコン天子は小説で扱われることは稀であり、とても良い着眼だったと思う。
妖剣・蒼龍伝―中国怪奇譚
装丁が素敵でぱらぱらとめくってみたのだが、面白い。話はシンプルだがまとまっていて、語り口が自然で引き込まれる。平易な文体だが読ませる。聞いた事のない作家だぞ!(失礼!)調べたところ、以前にかなり活躍していた方の復刻版です。何十年もたって復刻版が出るくらいだからやはりすごい。今読んでもぜんぜん不自然じゃない。中国ものというのも色あせない理由の一つではあるのでしょうが。
漢の武帝―大帝国を築き上げた中国屈指の皇帝 (PHP文庫)
前漢の全盛期を作り上げた劉徹・武帝の生涯を描いた小説。有名な楚漢戦争と三国時代を扱った小説は数多存在するが、本作はその間の漢の時代を取り扱ったものであり、それだけでも貴重である。先代・先々代の質素倹約な治世、いわゆる「文景の治」の跡を受けて、武帝は逆に国庫を空にしてまで難敵・匈奴に立ち向かい、結果として漢の領土を広大なものとする。果てのない未開の西域を旅する張騫、高名な漢の将軍である李広・衛青・霍去病らの活躍、武帝を取り巻く後宮女性の骨肉の争いなど、見所は多い。古代の中国に興味のある方なら、間違いなく楽しめる内容となっている。