パリ、テキサス【字幕ワイド版】 [VHS]
いろいろなシーンの断片が記憶に残る映画です。主人公トラビスの奥さんの昔の映像が一瞬映るのですが、映画を通して、彼女が笑うのはその古いフィルムの中だけなんです。その笑顔が凄く印象的。その他には、店で振り返る彼女の赤い服や、晴れた日に並べられた色とりどりの靴。ライ・クーダーの音楽。そういうひとつひとつのものやシーンに対する美意識が凄く好きです。なんだか丁寧で大事に撮られたかんじが良いです。
初めてみたのは10代。とりあえず有名な映画を見ておこうという感覚で。その時は、こういうビジュアルばかりに目がいって、でもなんとなく頭の隅にずっと焼き付くといったかんじでした。そしてその断片を見たくて、何年か後に見たとき、不器用すぎる男とその愛に声をあげて泣きました!
パリ、テキサス(オリジナル・サウンドトラック)(紙ジャケット)
これは、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得したヴィム・ヴェンダース監督のロード・ムーヴィー『パリ、テキサス』パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]のサウンドトラックのデジタル・リマスター盤です。
このサントラに引用された映画内のセリフを聴けばわかることなのですが、歳の離れた夫婦と幼い子供が離れ離れになったまま、子どもが自動車の旅の末に再会を果たすも、また一緒に暮らすかどうかは未定という映画のストーリーどおり、ライ・クーダーが、どこか芯の抜けた世界をほとんど自身のスライド・ギター一本の演奏で表現しています。
ひずんだスライド・ギターの演奏が弦の切れたような音を残して終わる最後は、すべてが宙づりになった暗闇の世界を、ぼくらに暗示します。
今回リマスターされたことで音質はよくなりました。でも、日本盤ライナーはアナログLPのものをそのまま転載。9で映画からの英語セリフの引用には、原文と対訳がついていますが、でも、4のラテンの伝承曲の歌詞・対訳はなし。
この日本盤のおまけが貧相なことに対して、星ひとつ減点で星四つの評価にします。