ヤバい経済学 [増補改訂版]
人間の行動の根本にはインセンティブと言う考え方があり、経済的・道徳的・社会的に得をする方向に動く。これは情報から読み取ることができるのだけれど、情報には不平等さがあり、損をする人も生まれる。情報から読み取る際には、通念を取り払い、物事の相関と因果関係を正しく見極める必要がある。以上の様な思想に基づき、一見すると馬鹿馬鹿しいと思えるような疑問を次々と連想ゲームのように取り上げ、あらゆる解析手法を使ってデータから解き明かしていく。全くバラバラの話題なのだけれども根底には思想的統一性があり、まるで口述筆記したかの様なくだけた文体でつづられている。
解き明かした疑問の中にはかなり物議をかもす話題もあり、中絶の容認が犯罪率の低下を招いたとか、生徒のテスト結果で学校の評価をするようにしたら教師の不正が増えた、がそれに当たる。相撲の八百長に関する話題(7勝7敗と8勝6敗の勝率は前者が圧倒的に高い、など)は、感覚的にはあるかな、と思っていることを裏付けている。
学術書と言うわけではないのでこの本の中だけで得られた結果を検証するのは無理だけれど、こういう考え方があると言うことを啓蒙するのには役立つと思う。
誰も書けなかった日本のタブー (別冊宝島) (別冊宝島 1752 ノンフィクション)
今、「噂の真相」があれば、ここまでひどいメディア環境にはなっていなかったはず。
福島原発の事故で、よやく東電の体質が露呈したように、事件・事故でも起きないかぎり、まっとうな報道は出てこない。
そのような意味で、このムックに掲載された記事は、「噂の真相」とまでは言い切れないが、どれも秀逸。とりわけ、東電や電気事業連合会のメディア支配の実態について、ここまで掘り下げている記事はまだ出ていないし、今後も出ないだろう。
なぜなら、あらゆるメディアが電気マネーを喰ってきたから。こうしたインディーズの媒体でしか、指摘できない事実だ。
ほかにも、国体の要である皇室が今、大変な危機に瀕していることにショックを受けた。秋篠宮に親王が誕生したことで、皇位継承の問題、皇室典範の改正問題はうやむやになってしまったが、天皇家がこのまま続くのかどうか、、、危機の本質は何も変わっておらず、真に国体の護持を望む日本人なら、記事のいさぎよい指摘には、真摯に向き合わなければならない。
その他、震災が起こっていなければ政治課題になっていた前原・献金問題の本質や、相撲スキャンダルの複雑な背景など、既存の週刊誌はおろか、ネットの中には一行も見当たらない話が多く、ひさしぶりに活字の迫力を感じた。
ヤバい統計学
原題は、numbers rule your worldであり、
レビットの「ヤバい経済学」とは何の関係もない。
出版社が販売を促進するために、このタイトルをつけた
と思われる。読みやすい本であり、一般の読者にも理解
しやすい内容となっている。
内容としては、各章で統計学が実務上いかに用いられているか、
を紹介している。type 1 errorとtype 2 errorの話が盛りだくさん
で面白かった。この手の話を知らない人には、この本は面白いと思う。
もうすでに、このたぐいの本を読んだことがある読者には、それほど
目新しい話はないかもしれない。
読後感として悪くはないが、人に特にお勧めできる本でもない、と
いう感じ。
レスリング・ウィズ・シャドウズ [DVD]
よく、プロレスは八百長である、という論を聞くことがあります。
しかしながら、ブレット(主人公、当時WWE世界ヘビー級王者)の作中での言葉を借りるのならば、
「プロレスは虚構の世界だ。でも、レスラーはリアル(現実)なんだよ」
ということではないでしょうか。
“人間”ブレット・ハートと、“ヒットマン”ブレット・ハートとの間で揺れる彼の心情が良く描き出されていると思います。
この作品の中では、彼が100%正義として扱われています。
しかしもちろん、彼の視点からだけではなく、ビンス(WWEオーナー)の視点から見た風景もまた、重要になるでしょう。
ビンスは、ブレットのことを「裏切り者」と断言しています。
確かに、彼の視点から見れば裏切り者なのです。だって、WWEとWCW(ブレットが後に移籍したWWEのライバル団体)を天秤にかけた上、
月曜TV戦争と呼ばれた潰し合いの最中に移籍しようというのですから。
ビンスが怒っても当然でしょう。
しかし、そういった人と人とのせめぎ合いこそが、この作品に描かれている事実でもあります。
この作品は、プロレスファンが見れば面白い、というものではありません。
私の友人で、格闘技といえばK-1という男がいたのですが、彼に「絶対面白いから」といって見せたところ、今ではすっかりWWEにハマっています。
K-1も相変わらず見ていますが。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
私としては、是非多くの人にコレを見てもらいたいと思っています。
プロレスには、TVの中だけで繰り広げられる世界のほかに、こういう世界もあるのだということを知っていただくために。
まんが八百長経済大国の最期 (ペーパーバックス)
しつこい小泉叩きにはなんだか納得できないものがありましたが、
日本人の行き過ぎた欧米に対する劣等感と、中韓に対する優越感などの
指摘は確かに納得できるものでした。
(欧米ではこんなに進んでいるのに、それに対して日本はいまだに…
というのは好まれる展開ですよね。)
本書では日本と日本人は徹底的にこき下ろされていますが、
それでも作者の思いは
「がんばれ日本人、今立ち上がらなくてどうする!」
であると思いたいです。
バブルのツケの不景気・超低金利、無駄な公共事業、銀行への
際限ない公的資金投入など、この一冊にいかに日本が道を誤ってきたかが語られています。
思わず日本からすぐに逃げ出したくなりましたが、
しかしながら、被害者意識を捨て、この状況を何とかしようとしなくてはならないとも感じました。