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探偵物語 デジタル・リマスター版 [DVD]
1983年は松田優作にとって彼が出演した映画の最高傑作「家族ゲーム」が公開された年であり、彼のキャリアの1つの画期となった年。
その同じ年に、薬師丸ひろ子、松田優作、根岸吉太郎監督のトリオで製作され、公開された唯一の映画。70年代以降の日本映画を代表する3人が出会い、一瞬の出来事のように残していった、忘れがたい味のある映画だ。
薬師丸ひろ子主演の角川映画という制約はある。しかも少女アイドルから大人の女優へと脱皮してゆく時期。映画ではピュアな女子大生が好奇心で際どい大人の世界に首をつっこんでゆく。立ち位置が何とも不安定なのだが、その不安定ぶりを等身大の彼女が精一杯演じ、松田優作が受けとめ、監督がさりげなくその不安定さをフィルムに焼き付ける。実際、不安定な構図を要所で使ってキメている。
話は御嬢さんの探偵ごっこと言えばそれまで。もっと日本版フォロー・ミー、逆フォロー・ミーの要素があっても良かったのではと思う。3人のキャリアが交錯した唯一の映画であるだけにその思いは強い。
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FLOWER TRAVELLIN' BAND ‾日比谷野外音楽堂 ‾Resurrection [DVD]
日本の伝説的ロック・バンドによる、再結成後初の映像作品。
作品内容は他の方のレビューに詳しいので割愛させてもらうが、
ここに収録されたバンドのパフォーマンスは見事だ。
特に、衰え知らずなジョー山中のシャウト!
一般に、60〜70年代に活躍したバンドが現代に再結成した時、
大きな問題となるのは、メンバーの体力の減衰による部分…、
とりわけ加齢の影響が大きくパフォーマンスに出るシンガーであることは、
過去の幾つもの再結成バンドを思い起こせばわかることですが、
その点、ここに収録されているジョー山中の叫びは驚異的です。
若いバンドなんかよりも、よっぽどよく動き回り聴衆を煽動しているんじゃない?
また、シンガーと同じぐらいに体力消耗の激しいドラムの頑張りも見逃せないし、
これぞ70'Sなハモンド・オルガンの渋さは筆舌に尽くしがたい。
ファンが彼らに期待するサウンドのツボを心得ている。
が、しかしながら、本作に収録されているギター・サウンドはほとんど歪んではおらず、
ヘヴィ・ロック方面から彼らのファンになった当方はがっかりしなかったと言えば嘘になります。
なので、ヘヴィ・ロック・ファンの方で購入を検討されている方は、十分ご注意をば…。
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人間の証明 [DVD]
犬神家の一族に続く角川映画第二弾。
原作時代も推理小説離れした大作で、予算、特に宣伝費にたっぷりお金をかけている。
岡田さんがヒロインなのだが、松田優作が存在感感のある演技で彼主演の映画だと思っているファンは多い。
松田優作の凄いところは相手が大物俳優であろうと動じず常に堂々と相手を食うような演技をしていたところで、若くして亡くなってしまったのは本当に残念。
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証(あかし)―永遠のシャウト
本書は昨年惜しくも亡くなられた永遠のロックシンガー・ジョー山中氏(2011・8・7逝去、享年64歳)が生前出版された自叙伝である。ジョーさんが亡くなって本日で一周忌を迎えるが本書を知るきっかけとなったのはTBSラジオ『小島慶子キラ☆キラ』〈2011・8・11 O.A.〉でプロ書評家・吉田豪氏が追悼を込めてジョー氏の挿話を語っておられた時に本書を知った次第である。
ジョー山中氏といえば角川映画『人間の証明』〈1977〉で物語のキーマンとなるジョニー・ヘイワード役とともに劇中のクライマックスに流れた主題歌『人間の証明のテーマ』が印象的であるが(私も本作はお気に入りであり)、他にも角川映画『戦国自衛隊』〈1979〉のエンディングに流れる『ララバイ・オブ・ユー』(ちなみに主演の千葉真一氏はこの曲が大のお気に入りで現在でも影で口ずさんでいると語っていた)や『劇場版あしたのジョー2』〈1981〉で矢吹丈のライバルであるカーロス・リベラ役(声優)や『明日への叫び』『青春の終章~JOE…FOREVER~』は『人間の証明』同様大好きな曲であり、名曲であると思っているので未見の方は是非とも試聴して頂きたい。
ジョーさんの生い立ちについては生前『いつみても波瀾万丈』〈1995・3・4 O.A.〉にゲスト出演された際に語っておられたのを拝見していたが、今回一読して改めてその凄まじさがよくわかる。七人兄弟の四男坊であったジョーさんが兄弟の中で自分だけ肌の色が違っていた事(その理由については本書に記載されている)や小学2年の時に母が他界し、児童擁護施設に引き取られた事など本来ならあまりにもツライ幼少体験であるが、特にその事について恨むべくもなく現実を受け入れるジョーさんの逞しさ(もしくは鈍感力)には頭の下がる思いだ。
また腕っ節の強さを見込まれ協栄ジムからスカウトされ、ボクサーデビューを果たすも無理な減量(『あしたのジョー』の力石徹状態に近い)がたたって挫折するもその後に運命を引き寄せるかのように偶然居合わせた喫茶店でバンドメンバーがジョーさんの風体を見てバンドに誘われ(それまで音楽経験が全くなかったというのも驚きだが)、現在のジョー山中の誕生するきっかけとなり(まるでマンガのような展開)、その後も栄光と挫折をその都度味わいながらも全てを受け入れ前向きに進んでいくのもジョーさんの人生の特徴だ。
読後感として生まれた時から(肌の色からして)他人とは違うと蔑まれてもその事を恨むことなく現実を受け入れていたジョーさんが結果的には現在の地位の転機となったのもその事が原因であるのだから人生は面白いものである。もし、ジョーさんがその事に終始囚われていたら現在のジョー山中が誕生したのはわからないが現実を受け入れていたからこそ運命を引き寄せた事はある意味必然かもしれない。
最後にその事を強く踏まえたジョーさんの一文が最も印象に残りました。
後悔は、瞬間、瞬間において信念に基づいた決断をしていないから生じるのだ。偶然の積み重ねである人生を、必然的な運命に変えるのは、本人の強い信念以外の何ものでもない。
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あしたのジョー ソングファイル
私は幼稚園児のころ(昭和52年~53年ぐらい)、TVで「あしたのジョー」の再放送を見て、衝撃を受けた!もう夢中になってTVにかじりついたのである。エンディング曲は、おぼたけし氏の「美しき狼たち」であった。私の中ではTV版のエンディングは、ずっと「美しき狼たち」だと思っていたのだが、大学時代あらためてビデオを見て、オリジナルのエンディングが演歌調の全く別の曲「ジョーの子守歌」だったのに驚いた!後でわかったのだが、TV版の再放送では、劇場版「あしたのジョー」のテーマ曲が使われていたのである。それにしても、「あしたのジョー」を取り巻く楽曲は美しい。どれも個性的でいいのだが、おぼたけし氏の歌う「美しき狼たち」と「果てしない闇の果てに」は絶品である。せつなくも美しく、男達の哀愁が漂う。おぼ氏は実に歌がうまいのである。文句なく、オススメの一枚!!