リスト:超絶技巧練習曲
リストの「超絶技巧練習曲」
あなたは、今お持ちのCDだけで、ご満足ですか。
技巧だけを追い求めたもの、技量不足を演奏者の都合の良い解釈で勝手な「感性」に置き換えているもの。
ゲキチの「超絶」は、そのようなCDではありません。
完璧な技巧、息を呑む跳躍、一分の隙も無いスケール--想像を超えるダイナミックレンジ、さらに豊かな色彩感。
特に一曲だけ紹介するならば、第8番―冒頭の3小節だけで、あなたは死霊に姿を変え、魔界へと旅立ち、『死者の狩り』にいざなわれます。
怪しげな音に翻弄され、我を忘れ、再び生きてこの世に戻れるのか--通常では考えられないほどの、不安、焦燥感に煽り立てられます。
しかし、ご安心。5分10秒後には、晴れて、現世に「突き落とされ」あなたの夢は、無事!覚めるでしょう。
ゲキチのリストを聴かずして、リストを語る無かれ。リストは十二分に文学者である。
珠玉のリスト名曲集
テクニックは申し分ない、フィガロファンタジーのフィナーレ近くに登場する超絶技巧の奔流は勢い激しい。カンパネラも音の一粒一粒を大事にし、クリアで大胆な表現で演奏している。
また詩情豊かな部分もある。愛の夢はほんとうに美しい、まるで原曲の歌曲を再現するかのような美麗さだ。リストの中でも大作「ダンテを読んで〜ソナタ風幻想曲」はゲキチの深い音楽性を構築する。
とかくリストを弾くものは技巧一本に走りやすい。しかし、ゲキチにはそこに彼独自の音楽性豊かな表現があって、ピアノを歌わせて響かせているのである。その各所細部にも手を抜かない楽曲構築は繊細で大胆なピアニズムで、軽やかさとしなやかさを感じさせる演奏である。