宮本武蔵(1) (吉川英治歴史時代文庫)
バガボンドを読み、是非原作を!と読みました。
井上さんの描くの圧倒的な迫力の武蔵を思い描きながら読みましたが、原作での武蔵は随分大人です。
バガボンドでは「本当の強さというものがまだわからない。それがわかるまで俺は斬る。」のようなことを吉岡清十郎を倒す段階で目をぎらぎらさせながら言っていますが、原作では千年杉に沢庵に吊り下げられたことである程度悟りきっているような印象さえあります。
巻が進むに連れ、武蔵の存在を周りが認めます。
「あれになろう、これになろうと焦心るより、富士のように黙って、自分を動かないものに作り上げろ。世間へ媚びず、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値打は世の人が極めてくれる。」
人を斬り倒すための「剣術」ではなく、剣によって己を知り、己を制し、泰平なる世の中を創り上げるための「道」としての「剣道」。
この剣道を志す、武蔵にふさわしい言葉です。
そして、「宮本武蔵」にはもう一人見るべき人物がいます。お通です。
「あの橋で待っています。何年も何年も待っています。」そんな場面があります。通信手段もない時代、そんなことができるでしょうか。でもお通は本当に待つんです。今の日本の女性にはなかなかない、「真の強さ」を持つ、そんな女性です。
最後に、武蔵が剣道によって己を一人間として高みまで磨き上げたことについて触れたいと思います。
若き日に武蔵の持った「強くなりたい」というぎらぎらした野心。強くなるためにめちゃくちゃに斬って斬って、夜ぐっすり寝ることも油断とするとげとげしいまでの考え方と行動です。
それを見て、同じような道を歩み、老いると共に磨かれた先輩達が、
「お前は強すぎる。」
と諭し、武蔵は「負けた。」と感じます。そんな経験から見えてくるもの、違った考え方が生まれてきたのではないでしょうか。
武蔵の目のぎらつきは、いつしか深みへと変わっていったものと思わずにはいられません。
宮本武蔵 全8冊 吉川英治歴史時代文庫
市川某さん主演のNHK大河ドラマで脚光を浴びたことで、未読の世代にも再注目されたのではないでしょうか。
(20年程前、役所広司さん主演でNHKが大河ドラマを放送したが、個人的には役所武蔵の方に凄みと愛着を感じます)
日頃の練磨と自己節制の末に無双の精神と身体を体得した武蔵。
謀略・機智・突発かつ冷静な残忍さという悪の魅力を放つ小次郎。
清純可憐・哀切のすれ違いを反復する芯の強いヒロインお通。
そこに様々な魅力ある人物が絡み、長編を長編と感じさせないストーリー・テリングによって、吉川英治氏が創作した世界に引き込まれていく。
私が薦めるまでもなく、万人必読の書でしょう。
余談ですが、吉川英治氏が自作を朗読したカセットテープが一巻だけ存在するそうです。
それがこの『宮本武蔵』のエピローグ部分と聞きました。
作品の深みが凝縮されたエピローグをここに書く訳には行きませんが、多くの人に結びの数行を味わって欲しいと切に願います。
(菊池寛等の武蔵最強論に関する逸話を知っていれば、この結びの一文は、更に深みが増幅します)
宮本武蔵
日本の伝統楽器を活かしたロックバンド、MUSASHIのアルバム。
六三四が「宮本武蔵」をやる、という気の利いたシャレのような題材だがドラマのサントラというわけではなく、れっきとしたロックアルバムであるのでご安心を。
ギター、ベース、ドラム、キーボードというロックフォーマットに
三味線、尺八、和太鼓等を加えたその独自のサウンドはこれまでのアルバム通り、ハードロック並みに力強く、プログレ並みに斬新であることに変わりはない。
今回は曲ごとに「宮本武蔵」に登場する人物や場面を想定したものになっていて全編インストでありながら、非常にドラマテイック。
以前よりもキーボードのアレンジが美しくなっていて、下手をするとシンフォニック系のプログレハードとしても聴けてしまうほど。
この素晴らしい日本のバンドを知らずにおくのはもったいないです。
宮本武蔵(一) (吉川英治歴史時代文庫)
巨匠吉川英治先生の代表作とも言うべき傑作です。
冒頭の‘関ヶ原’の敗残の混沌から物語は始まります。頃は戦国時代も終盤、
武蔵たちは当時における‘アプレゲール’といった処でしょうか。
ささいな行き違いや誤解が彼の心を野獣に駆立てます。
将来への不安や自信のなさや浅薄な思慮、それゆえの刹那感・・・。
それはいつの時代でも若者の等しく辿る道です。
殺伐な場面も吉川先生の慈愛にあふれた暖かいペンタッチで
少しも嫌な気分にはなりません。
本当に優しい方なんでしょうね、吉川先生は・・・・。
非道の限りを尽くし作州宮本村の千年杉の梢に武蔵は縛められます。
そこで生涯を通じての師傅ともいうべき一世の聖賢:沢庵宗彭に諭されます。
そこで初めて人としての心や命の貴さに武蔵は向き合います。
全てがこれらの‘出会い’・・・から始まるのでした。
自らを活かし得る更なる艱難に出会うため、武蔵は旅に出ます。
恃むは一腰の孤剣。青春、まだおそくはない・・・・。
私自身、この言葉に何度勇気付けられたことでしょう。
ついつい吉川先生の世界に時の経つのを忘れてしまいます。
得意の時も失意の時も座右に置きたい名作です。
全ての方々に心からお奨めします。
【国産木刀】本赤樫 宮本武蔵櫂型素振木刀(巌流島写し)
素振り練習用に購入しました。重さ長さなど問題ないですし、人と違ったものを好まれる方にはいいと思います。
ただ、手の小さい方は、握り部分が太いので扱いにくいかも。あと、値段の割にニスの塗りとか文字に雑さがあります。
商品に当たり外れがあるかも。